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連載コラム
「ロシア メディア事情」
ロシア東欧経済研究所次長・岡田邦生

【1】


世界が注目する携帯電話市場

5年で30倍、激増する加入者

(2005年8月9日付)

 モスクワの空港で、近くに座るロシア人の携帯電話から、新国歌として採用されたアレクサンドロフ作曲の勇壮なメロディーが流れた。新生ロシア連邦の国歌は旧ソ連国歌の曲に新たな詞を付けたものであるが、その是非を巡って国内で激論が交わされ、2000年12月にようやく承認された経緯がある。ハッとして彼を見ると、「やはりこの曲だね」と言わんばかりにウインクをしながら私を見た後、おもむろに電話にでた。

 近年のロシアにおける携帯電話加入者数の増加には目を見張るものがある。空港で新国歌の着メロを聞いたのは2000年冬のことと記憶するが、2000年末のロシアの携帯電話加入者数は345万人、その後、加入者は毎年倍増する勢いで増え、2004年末には7440万人、本年末には1億人を超えると予測されている。わずか5年で30倍近い加入者数の増加である。ロシアの人口は1億4400万人であるので、単純に計算すれば、今年中に人口の3分の2以上が携帯電話を所有することになる。

 ロシアの携帯電話専門の調査機関であるSOTOVIKによれば、2004年には3140万台の携帯電話が販売され、その市場規模は44億8000万ドルであったという。2005年には3500万台に及ぶ販売が見込まれているが、同年の中国での予測販売台数は6500万台とされている。ロシアの人口が中国の9分の1程度であること、また、国内メーカーがなく、すべての端末を外国からの輸入に依存していることを考えれば、ロシアは世界が最も注目する携帯電話市場であるといっても過言ではなかろう。

 ロシアにおける携帯電話端末のメーカー別シェアを見ると、ドイツのシーメンス、米国のモトローラ、フィンランドのノキア、韓国のサムスンが上位を占めており、前出の調査機関によると、これら4社で75%以上のシェアを占めている。そして、その後に続くのが、英国に本社を置くソニー・エリクソンで8%のシェアを有しているが、それ以外の日本メーカーのシェアは非常に低い。

 しかし、最近になって、日本企業が積極的にロシア携帯電話市場に参入をはじめた。ロシアでは前記のとおり、携帯電話の利用が急速に進んでいる一方、モバイル・インターネットはサービスが限られ、ショートメッセージの送受信が主体である。

 NTTドコモは36%のシェアを有する最大手携帯電話事業会社MTSと提携して、2005年中にロシアで携帯電話のインターネットサービス「iモード」を提供する予定である。また、住友商事は、位置情報サービスやレストラン検索など、様々な携帯電話向けのネット接続型情報提供サービス事業に取り組んでいる。

 携帯電話の普及率が飽和状態にあるモスクワでは、携帯電話の総需要に対する買い替え需要は高まる一方で、本年に入ってからはその比率が100%に達したという。こうした状況を受けて、日系の携帯電話メーカー各社は富裕層を対象に高価格帯端末を販売する戦略をとっている。

 なかでも、NECはiモード対応端末を本年9月に、さらに、2006年には第3世代携帯電話端末を販売し、ロシアの端末市場で3年以内に4%のシェア獲得を目指すという。

 ロシア人にiモードが受けるか否かは未知数であるが、最近、ロシア各地で見かける携帯電話が大型カラー液晶画面、カメラ機能などを搭載した高付加価値なものに代わってきている印象は否めない。もしかすると、近い将来、ロシア出張中に日本の着メロを耳にすることもあるかもしれない。

 (ロシア東欧貿易会ロシア東欧経済研究所次長)