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(2000年12月19日付)
米国次期大統領はブッシュ知事にほぼ確定した。(ただし、一月六日開票の選挙人 投票の結果次第ではゴア大統領誕生、またはブッシュ大統領とリーバーマン副大統領 という混成型政権のシナリオもありうる)
クリントン政権の外交政策が弁護士(バーガー国家安全保障問題担当補佐官)や投 資銀行家(ルービン前財務長官)に依拠していたのと比較すると、次期ブッシュ政権 では国防・安全保障政策の専門家が外交政策を推進することになる。
しかし、議会における共和・民主両党の接戦を考えると、ブッシュ政権が本格的な 外交政策を展開するまでにはしばらく時間がかかりそうだ。下院では共和党が僅差 (きんさ)で優位を保っているが、上院では文字通り両党五分五分の状況。
さらに二人の共和党上院議員(九十八歳のストロム・サーモンド議員と七十八歳の ジェシー・ヘルムズ議員)の健康状態が懸念されており、もし一人でも欠ければその 後継者には民主党議員が就く見込みだ。こうなると、上院で民主党優位のシナリオも あり、国内中心型の民主党が多数を占めれば外交への悪影響も懸念される。
これほどタイトな政治状況では、ブッシュ政権は超党派的対応を迫られ、まずは国 内政策で合意可能な分野から超党派合意の実績を築き上げることが最重要課題とな る。また閣僚や政府高官などの人事任命だけでかなりの期間を費やすことになろう (初期のクリントン政権では人事収拾だけで九カ月かかった)。
外交政策を本格的に展開する段階に至っても、中国政策を先送りにして日米同盟強 化を優先する可能性が高い。皮肉なことに、従来のジャパン・パッシング(日本無 視)のおかげで、対日政策は議会内で主だった異論もなく超党派合意を築きやすい分 野になった。しかし、中国政策を巡る議論は依然激しく、ブッシュ政権初期にはハイ リスクなイシュー(事柄)だ。
なるほど中国は間違いなくブッシュ政権の最重要課題の一つではある。高官候補が 一同に対中関係を最重要項目の一つに挙げている。が、肝心の大統領候補はこれまで あまり中国政策を取り上げず、むしろ避けてきたとさえ言える。中国政策は党内の深 い構造的対立を浮き彫りにしかねない。民主党内では環境派・人権派・労働組合派と 親ビジネス界派との間の対立、共和党内部でも対中強硬路線を主張する保守派と関与 政策派との間で足並みは乱れている。
ブッシュ政権が対中政策を本格的に発展させるのは、ある程度政権基盤が安定して 議会と良好な関係を築き上げた後になろう。ただ、二〇〇一年四月には台湾への武器 供与、特に台湾への地上配備型TMD(戦域ミサイル防衛)の供与を巡ってブッシュ 政権は議会や中国政府と一波乱起こす可能性がある。
国防次官就任が有力視されるアーミテージ氏は去る十一月に次期政権の対日政策に 関する超党派提言を発表し、日本の集団的自衛権への制約を日米同盟発展の阻害要因 として指摘した。提言作成グループ内で議論が分かれた点だ。
ジョゼフ・ナイ元国防次官補、カート・キャンベル前国防次官補代理、マイケル・ グリーン外交問題評議会上級研究員らは、日本に集団的自衛権行使容認を迫るのに慎 重だったが、その他の共和党系メンバーは積極的であったと言われる。日本政府も当 初はブッシュ政権誕生に期待していたが、今や「要求内容が厳しすぎる」との懸念を 強めている。アーミテージが政権入りすれば、従来の「日本無視」から今度は一気に 日本に「これをやれ! あれをやれ!」という「要求過剰型」になりかねないとの懸 念が聞かれる。
同盟関係の強化はアメリカ長期国家戦略上、最重要課題の一つだ。地域紛争や国内 紛争への対応は近隣諸国に主導権をとってもらい、アメリカは必要な訓練や兵器等の 物資を提供するという、同盟国との新たな役割分担に向けた構想が実現されようとし ている。東チモールでオーストラリアがPKOをリードした例が理想像としてよく引 用される。
世界は日本が地域ビジョンと国家戦略を打ち出すのを心待ちにしている。「アメリ カの要求を受けてから考えてみよう」というのでは、またも湾岸戦争時の二の舞にな る。我々にはブッシュ政権の本稼動に向けた用意があるのか? 二十一世紀、日本に とって最初の正念場が来年早々にも訪れる。
(米国・外交問題評議会研究員)