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(2000年9月19日付)
九月一日、クリントン米大統領は、全米ミサイル防衛網(NMD)システムの配備 開始の判断を次期政権に「先送り」することを発表した。
筆者は、この大統領演説の模様をソウルで観て、その後、台北へ移動して国際的な 反響をフォローした。そこで、韓国と台湾の新聞がこれをどのように報じ、分析して いるかを中心に紹介してみたい。
九月四日付タイワン・タイムズは、ほぼ一面を割いた長大な分析記事「ミサイル (防衛)計画の運命はかなり以前からわかっていた」を掲載。
NMDシステムの建設に手をつけることすら拒否したクリントン大統領の判断は、 すでに一月にロシア政府が「限定的なNMD配備を可能にするような弾道迎撃ミサイ ル(ABM)条約の修正には絶対に応じられない」と初めて言明したときにすでに固 まっていたと論じた。
なぜなら、米政府にとって「ABM条約こそロシアとの間の軍備管理の要石」(ニ ューヨーク・タイムズ九月三日付)であり、「クリントン氏は、そのABM条約を葬 り去った大統領となりたくなかった」(ワシントン・ポスト九月二日付)というわけ だ。
さらに、タイワン・タイムズの記事は、クリントン大統領の「先送り」決定は、共 和党の攻撃からゴア民主党大統領候補(現副大統領)を守るためであった、との興味 深い分析を行っている。つまり、この決定で、NMD問題は、民主、共和両党候補の 判断に委ねられることになり、共和党による政権叩きの具とはなりにくくなったとい うのである。
この点は、ニューヨーク・タイムズの外交専門記者ジム・ホーグランドも署名記事 「ブッシュのミサイル防衛をめぐる上げ足取り」(インターナショナル・ヘラルド・ トリビューン九月六日付)で詳しく論じている。
クリントン大統領の決定に対し、かねてからNMDシステム配備に積極姿勢を見せ てきたブッシュ共和党大統領候補(現テキサス州知事)は、「クリントン・ゴア政権 は国家軍事態勢および即応能力を無責任なまでに弱体化させてきたが、今回の決定は その際たるもの」と非難した(コリア・ヘラルド九月五日付)。
しかし、ホーグランド氏は、ブッシュ氏が昨年の暮れに氏とのインタヴューに答え て、「クリントン政権によって先送り決定がなされるとすればそれは歓迎すべきこと だ。なぜなら、もし私が当選したならば、さらに強力なシステムを配備しようと考え る私の手に決定が委ねられるのだから」と述べていたことを披露し、今回のブッシュ 氏の攻撃は、明らかに政治的得点を狙ったものに過ぎないと噛みついた。
ところで、NMD問題は、国際的な波紋を広げながらも、米国内の「ミサイル版パ ール・ハーバー」(日本軍による真珠湾奇襲攻撃のミサイル版)の恐怖に対処するた めに、今後もその実現に向けた努力が重ねられるであろう。実際、クリントン政権が 「延期」決定を下したのは、幾つもあるミサイル防衛システムのうちのたった一つの システムについてだけだという。
「次はプランB‥クリントン氏の握るより多くの選択肢」と題する九月五日付イン ターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙の記事は、ロシア側も共同開発に合意し ている戦域ミサイル防衛システム(TMD)を発展させることにより、米国は実質的 な国家ミサイル防衛網を形成することができる、と論じている。
ここで、詳しく紹介する紙幅はないが、日本も、米国との共同研究に着手したTM Dが、やがてNMDへと発展する可能性を秘めている以上、この問題に無関心でいら れないことは確かであろう。
(米国・外交問題評議会上席研究員)