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(2000年8月29日付)
去る七月十八日、中国を初めて公式訪問したロシアのプーチン大統領は、江沢民・ 国家主席とともに、米国の国家ミサイル防衛網(NMD)に反対する中露共同声明を 発表し、NMD計画が実現した場合、「米国自身の安全保障にも最も深刻で否定的な 影響を与える」と警告した。
その後、ロシアの指導者で初めて訪朝したプーチン大統領は、北朝鮮(朝鮮民主主 義人民共和国)との間で、NMDそして日米が共同研究を進める戦域ミサイル防衛 (TMD)を非難。また、続く沖縄G8サミットの場では米国を向こうに回してNM Dを、続くASEAN地域フォーラム(ARF)では中国や北朝鮮とスクラムを組ん でNMDとTMDの批判を繰り広げた。
これを受けて、ファー・イースタン・エコノミック・レビュー誌八月三日号は、 「撃ち方はじめ」と題する記事で「米国のミサイル防衛計画はアジアにおける軍拡競 争を煽(あお)ることになるかもしれない」と深刻な疑問を投げかけた。そこで、今 回と次回の二回にわたって、米国のNMDをめぐる国際論壇の賛否両論に光を当てて この問題の核心に迫ってみたい。
エコノミック・レビュー誌の記事は、「中国は自らの安全保障が傷つくかもしれな い事態を前にして決して手をこまねいてはいないだろう」といった中国の軍備管理交 渉責任者の発言や、「ある国の一つの(軍事)技術革新は、他の国に対してそれに対 抗する技術革新を促進させるものだ」とのシン・インド外相のコメントを引きなが ら、とくに、中国の対抗措置がインドやパキスタンを巻き込んだアジア全域における ミサイル軍拡競争へ飛び火する危険に警鐘を鳴らした。
そんな折、ニューヨーク・タイムズ(八月十日付)は、「米国のNMD開発に対す る諸外国の反応」と題する米情報機関の秘密報告書の内容を暴露。報告書は、クリン トン政権が開発を進める限定的なNMD網(約百基)を突破するために、中国が二〇 一五年までに最高二百発の長距離弾道弾を開発する可能性があるという同報告書の予 測を明らかにした。
ところで、クリントン大統領は、同報告書が分析した(1)各国の反応、(2)そ の反応がもたらす軍備管理努力への(悪)影響に加え、(3)開発コスト、(4)技 術的な実現可能性といった「四つの基準」を精査して、NMD網の本格的開発の是非 について今年中に判断を下すとしている。
このクリントン大統領の政治判断を左右する四つの基準をめぐっては、英誌エコノ ミストが、六月三日号のカバー・ストーリーで詳細に論じているが、そこには、もう 一つの重大な要因、すなわち米国の国内政治上の力学が働いていると指摘している。
次回は、この点を手がかりに、民主・共和両党の正副大統領候補も決まり佳境を迎 えた大統領選挙の行方をにらみながら、米国の「弾道ミサイルをめぐる政治」(ワシ ントン・ポスト紙七月二十日付)が、国際社会に与える影響などについて、引き続き 考えてみたい。(米国・外交問題評議会上席研究員)