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(2000年8月8日付)
紺碧(こんぺき)の空の下、珊瑚礁(さんごしょう)をたたえたエメラルドグリー ンの海に囲まれた美しい島・沖縄は、また、太平洋戦争最大の激戦地として深い悲し みを引きずってきた。まさに「戦争の世紀」と呼ばれる二十世紀を締めくくるには象 徴的な場所で、今世紀最後の主要国首脳会議(G8サミット)が開催された。そこに は、先の大戦で対決した連合国(米英仏)と枢軸国(日独伊)の首脳が一堂に会した のである。
果たして、この沖縄ならではの意義深いメッセージは世界に伝わったであろうか、 というのが筆者の最大の関心事であった。しかし、サミットを伝える国際メディアの 記事を読みながら落胆を禁じえなかった。
第一に、もはやここ数年のサミットの扱いが余りにも軽いのである。すべては「事 務方」に仕切られ、各国首脳の存在感はほとんどない。米紙ニューヨーク・タイムズ (七月二十四日付)にいたっては、「クリントン、急ぎキャンプ・デービットへ戻 る」の見出しで、沖縄サミットにではなく、仲介役の米大統領不在の中、こう着状態 に陥っていた中東和平交渉に、スポットを当てた記事を載せたのである。
第二に、主催国である日本の意図は、国際政治の現実に翻弄(ほんろう)されてし まった。香港誌ファー・イースタン・エコノミック・レビュー(同二十七日号)こ そ、小渕恵三前首相が生前「沖縄はアジアの表玄関であり、沖縄サミットにはぜひア ジアの視点を反映させたい」と語っていたことを紹介し、サミットでは「アジアの復 活」が焦点になるであろうとの観測記事を掲載したが、欧米のメディアは、中露両首 脳による全米ミサイル防衛(NMD)網計画「包囲網」に関心を集中させた。
また、就任後初めて参加したプーチン露大統領の言動を追いかけたものが目立ち、 米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(同二十四日付)は国際面で、北朝鮮の金正 日総書記との首脳会談で「北朝鮮ミサイル開発断念も」との衝撃発言を引き出したプ ーチン大統領を「サミットの花形スター」と位置づけ、主催国の森喜朗首相の影は薄 かった。
第三に、サミットという「年中行事」そのものが、曲がり角に来ているといえる。 もはや、サミットというだけでは国際社会の関心を引きつけることはできなくなっ た。今年はITが主題とされ、「沖縄IT憲章」なるものも発表されたが、エイズ対 策や貧困国救済その他山積する議題に埋没してしまった感がある。しかも、英紙タイ ムズ(同二十二日付)やデイリー・エクスプレス(同二十一日付)がこぞって「ぜい たくサミット」批判を展開し、「救われるべき貧困国に対する侮辱」とまで酷評され てしまった。
結局、英誌エコノミスト(同二十二日号)が総括したように、「サミットはシンボ リズム以上のものではなかった」のであろう。冒頭でも述べたように、世紀の変わり 目で開かれたサミットに、戦争と平和をめぐる二十世紀の総括があってもよかったの ではないか。とくに、米国の進めようとしているNMDや核やミサイル脅威の拡散問 題こそが、今回の中心テーマになるべきではなかったか。世界の指導的な立場に立つ 政治家たちには、そんな骨太の議論を闘わせて欲しかった。(米国・外交問題評議会上席研究員)