【Seikyo Media Page】Copyright (C) 1997-2000 by The Seikyo Shimbun.



ニュース検証 国際人権法の視座から

【6=完】


国際人権のこの1年
難民、環境、高齢者、子ども…前途多難

(2002年12月10日付)


 この12月10日は、1948年に世界人権宣言が第3回国連総会で採択されてから54年目の「世界人権デー」にあたる。「人権の世紀」と呼ばれる21世紀も、2年目が過ぎようとしている。この一年を振返ってみよう。

 昨年9月11日に起こった同時多発テロのあと、アメリカのアフガニスタンへの軍事行動に続き、最近ではイラクに対する軍事行動も噂される。世界には、70数カ所に戦乱の火種が転がっている。戦乱の度に、罪のない人々が犠牲になり、家を焼かれ、故郷を追われて難民となる。難民の数は5000万人にも及ぶ。

 環境問題も深刻で、南極の上空のオゾン層に、フロンガス等によって南極大陸の広さの2倍にも及ぶ穴があき、そこから有害な紫外線が地表に降り注ぐ。ダイオキシンなどの環境ホルモンによって人類の生殖能力は阻害されている。京都議定書は発効に向かっているものの排出される二酸化炭素は増大し、地球温暖化によって太平洋の島国は海没の危険があり、我が国でも海面が50センチ上昇すれば290万人の移住が必要と伝えられる。

 魚類などの海洋資源は乱獲によって涸渇し、樹木の乱伐によって地表の4分の1をしめる砂漠は毎年600万ヘクタールずつ拡大し、埋蔵地下資源の石油や天然ガスはあと数十年で涸渇すると伝えられる。目前の利便・幸福の追求によって、将来の人類はどうなるのだろうか。

 今年は8月、南アのヨハネスブルクで「持続可能な開発に関するサミット」が開かれ水、エネルギー、健康、農業、生物多様性について討議したが、各国の利害がからみ成果をあげることが出来なかった。

 4月には高齢者に関する国際会議がスペインのマドリードで開かれ、老齢化への新戦略と各国政府・国際機関の課題を盛り込んだ国連行動2002を採択した。現在世界人口の1割が高齢者だが2050年には2割になる。我が国ではそれに先立ち、同月公表された「人権教育啓発に関する一般計画」によれば、2015年に国民の4分の1が高齢者になる。

 翌5月には、国連子ども総会がニューヨークの国連本部で開かれ、「子ども最優先」「貧困の撲滅」などの10原則を定めた「子どもにふさわしい世界」の宣言が採択された。

 民族浄化などを理由にした大量殺害など目に余る人権侵害に対して、すでにルワンダ、旧ユーゴについては、国際刑事裁判所が設置されているが、全世界的な国際刑事裁判所規定が7月1日に発効し、来年設置されることになった。

 日本については、5月8日に幼児を含む北朝鮮人5人の家族が瀋陽の日本総領事館に庇護を求めたのに、中国官憲によって阻止され連れ去られる事件が発生した。9月17日には北朝鮮政府が拉致事実を認め、被拉致者5人が帰国したが、家族呼寄せや、その他の拉致者問題など来年に持ち越される。

 国際人権の問題も、前途多難である。

(人権教育啓発推進センター理事長、明治大学名誉教授)