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ニュース検証 国際人権法の視座から

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不法移民と難民――
人道的に対処する姿勢を

(2002年7月9日付)


 幼い子どもの手を引きながら険しい崖をよじ登り国境を越える姿、ベルリンの壁を越えようとして射殺された人の墓標、難破しそうな小船一杯に溢れるようなボートピープルを載せ荒波にもまれている写真を見て胸の痛まなかった人はあるまい。

 人間は、本来行きたいところに行き、したい仕事が出きるという「居住の自由」を持っているはずなのだが、現在の人類は「国家」という単位を作って生活しているため国境の壁に阻まれている。

 世界人権宣言の第14条は「すべて人は、迫害を免れるため、他国に避難することを求め、かつ、避難する権利を有する」と定め、日本も加入している難民条約・議定書は、迫害の待っている国に難民を送還してはならぬというノン・ルフールマン原則を定めている。

 去る5月8日に幼児を含む北朝鮮人5人家族が、瀋陽(もとの奉天)にある日本総領事館に庇護を求めたのに、中国警察官に強引に連れ出され、支援団体が映した生々しいビデオが世界中に放映された。一応22日に出国、マニラ経由で韓国への亡命が認められるという形になったが、その間の当局やマスコミの対応は、総領事館の領事特権が侵されたという点に重点が置かれ、人権、人道という点からの反応が薄かったように思われる。

 去る6月12日参院憲法調査会は「基本的人権 人権の国際化」を主題に開かれたが、参考人として呼ばれた横田洋三教授は、せっかく憲法で高らかに保障された人権が、最近影が薄くなり、国際機関によって批判の対象にもされているが、その基底には日本人の人権しか考えていない点があるのではないかと、瀋陽事件も引用しつつ指摘した。

 確かに現行の国際法では他国に逃れた難民は庇護されるが、第三国の大使館、領事館が難民をかくまう外交的庇護については確認されていない。しかし公館は不可侵権をもち、中に逃れた難民を人道的に処遇しなくて良いということにならないのは、当然である。

 6月はじめに東京の足立区で6歳の何日昇君が誘拐され、30時間ぶりに救出されるという事件があったが、その後その両親が不法滞在、いわゆるオーバーステイ(不法残留)だということで逮捕されるという意外な進展になった。

 日本での不法残留者は現在22万4000人に上ると言われ、英国やドイツで不法移民の数が100万人を数えるのには及ばないが、入国管理局は、不法入国に目を光らせている。国家があり国境がある以上、不法に入国したり、不法に滞在することを取り締まることは当然と言える。また最近西欧でも不法移民に対する規制が厳しくなっているが、難民の庇護は守られている。

 わが国では、難民は入国後60日以内に申請しなければならぬという「60日100ルール」によって形式的に規制されてきた。また認定されるまでは在留、就業許可も出ないため、困窮する実情にある。

 かつてインドシナ難民については、一定の受け入れ枠も作り定住促進支援も行われた経緯がある。難民については難民条約の精神を汲んで人道的に対処する姿勢が今後も望まれる。

 また、不法在留者といえども人間であり、その人権を無視して良いわけではない。入国管理行政においても国益と人権の妥当な衡量が考慮されてしかるべきであろう。

 (人権教育啓発推進センター理事長、明治大学名誉教授)