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連載「ニュースの眼」
ニュースの眼

新刊『ザ・ペニンシュラ・クエスチョン』

朝鮮半島第2次核危機を活写

(2006年11月14日付)

 2002年、北朝鮮による高濃縮ウラン(HEU)型の核兵器開発疑惑が表面化し、北東アジア情勢に核の脅威をもたらすことになった「朝鮮半島第2次核危機」――。

 米朝2国と日本、中国、韓国、ロシアは、6カ国協議によって、危機的状況の打開を試みるが、各国の思惑が錯綜し、解決への目途は依然として立っていない。

 第2次核危機は、回避できなかったのであろうか。新刊『ザ・ペニンシュラ・クエスチョン』(船橋洋一著、朝日新聞社刊)は、その疑問に答える形で、いくつもの「失われた機会」があったことを指摘している。

 例えば、ジェームズ・ケリー米国務次官補(東アジア太平洋担当、当時)の訪朝は、その最初のチャンスであった。

 02年10月、ケリーは平壌で、姜錫柱第一外務次官と会談した。席上、姜が「われわれは高濃縮ウラン計画を進める権利を持っているし、それよりもっと強力な兵器もつくることになっている」と発言。ケリーは「いまの発言をもう一度繰り返してください」と念入りに確認する。

 帰国したケリーの報告に接し、ブッシュ大統領をはじめ、米政府高官は「本当にそう言ったのか?」と、一様に驚きと戸惑いの色を示した。だが、北朝鮮はその後、<認めた>発言を否定。言ったか否かをめぐり、米朝双方の対応はエスカレーションの一途をたどる。

 著者の分析によれば、ケリーが北朝鮮に対し、HEU計画を正面から問い質した結果、絶好の機会を逃してしまった。ケリー主導による“段階的廃棄の外交戦術”も可能であった、と。

 同様に、関係各国の外交シーンが、テレビモニターで映されているかのごとく、臨場感たっぷりに描かれている点も、本書の魅力の一つといってよい。

 朝日新聞コラムニストにして、稀代の国際ジャーナリストである著者は、約4年に及ぶ取材で、あまたの関係者証言を蓄え、740ページ超の浩瀚の書を完成させた。調査報道に基づく外交舞台裏のリアルな活写からは、ジャーナリズムの社会的使命を果たそうとする著者の気迫も存分に伝わってくる。

 北東アジア外交史の一幕を的確にとらえた、日本の外交ジャーナリズムの面目躍如たる好著といえよう。

 (光沢昭義記者)