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(2006年6月13日付)
HIV/エイズの感染は、アフリカや東南アジア、東ヨーロッパを中心に拡大し続け、深刻の度を増している。エイズによって、1分に1人が命を落とし、15秒に1人が新たに感染。それも大人だけでなく、小さな子どもにまで及ぶ。
日本ユニセフ協会大使のアグネス・チャンさんは今年4月、世界で3番目にHIV/エイズ感染率が高い、アフリカのレソト王国を訪問。彼女の目に映った同国の現状は、想像以上に厳しいものだった。
レソトの総人口は、この10年間で、220万から180万人に減少。1991年に60歳だった平均寿命も、35歳にまで低下した。また、子どもへの感染は、孤児を生み出すことに。エイズによって親を亡くした子どもの数は、国内に約10万人。HIV/エイズへの偏見が強い地方の村では、母子感染の危ぶまれる子どもは、親戚にも引き取ってもらえないという。
先日、インタビューに応じたアグネス・チャンさんは「エイズは目に見えません。静かに、知らないうちに広まって、子どもの将来を奪ってしまう」「子どもが治療を受けるために、エイズへの理解をもっと深める努力が必要です」と指摘した。
HIV/エイズへの理解不足は、日本国内でも同様だ。日本の感染率は近年、先進国で唯一上昇している。90年代の薬害エイズ事件が教訓になっていないのか。国民に注意を促せなかった点では、マスコミの責任も少なくなかろう。
アグネス・チャンさんは「多くの人が、新聞やテレビ、ラジオといったメディアを通じて、エイズ問題に何度も触れてほしい。もっと言えば、私たち人間も媒体の一つということ。だれもが伝える力を持っています。例えば、娘さんが『アフリカでは、エイズが大問題なのよ』って語れば、お父さんを啓発することもできるはず」と。
つまり、一人ひとりの対話が、HIV/エイズへの差別意識を超えゆく確かな方途であるということだ。もっと知ろう、そして自分にできることをしよう――そうした身近な議論の活発化が大切であることを意識しつつ、私たち報道する側も、歪みのない視座を提供するよう、常に心掛けていきたい。(光沢昭義記者)