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(2006年5月9日付)
1950年代、共産主義者追放の名のもと、米社会に恐怖の一時期をもたらしたマッカーシズム――。CBSのニュースキャスター、エド・マローはその脅威に敢然と立ち向かい、米報道史に燦然と輝く実績を残した。彼は「放送ジャーナリズムの父」「放送の良心」として、今なお称賛され続けている。
公開中の映画「グッドナイト&グッドラック」(ジョージ・クルーニー監督)は、政治権力にひるまず挑んだ勇気と信念の言論人・マローと、その同僚たちの闘いを活写する。全編がモノクロ映像で貫かれるゆえ、50年代の米国が現実感をもち、映画はドキュメンタリーさながらの緊張感で展開していく。
1954年3月9日、マローらは報道番組「シー・イット・ナウ」で、“扇動政治家”ジョセフ・マッカーシーのコメントを取りあげ、その虚偽と策謀を暴こうとする。
何ら検証することなく、“赤狩り”の扇動に与する他のメディアと一線を画し、真実の追究に徹したマローら。番組放送を契機として、マッカーシーは次第に失脚へと追い込まれるが、彼らもまた痛手を負う……。
放送史に詳しい服部孝章・立教大学教授(メディア法)は「本作は、9・11テロ以降、愛国的な報道に偏ってしまった米報道界への批判と言える。単なる事実の提示にとどまらず、事実をじっくり掘り下げる、マローのような報道姿勢が今まさに求められていよう」と指摘。「日本の報道界は、争点の提示さえもできなくなっている。事実の精査を惜しめば、健全な批判力までも弱まることを自覚しなければならない」とも語る。
何を報ずべきか、何を明示できるのか。それによって、報道する側の見識・品格も決まるといってよい。報道の使命に殉じたマローの“不屈の闘争”が物語るもの――それは、安易な報道によって、権力擁護や人権蹂躙に堕しかねない、現代ジャーナリズムへの警鐘であろう。
(光沢昭義記者)
●映画は、東京のTOHOシネマズ 六本木ヒルズで上映中。全国で順次公開。東北新社配給。