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連載「ニュースの眼」
ニュースの眼

「取材源の秘匿」で異なる決定

「知る権利」の根幹を左右

(2006年3月28日付)

 「米国企業の日本法人が77億円の所得を隠した」などと報じ、企業側から情報源の開示を求められたNHK記者が「取材源の秘匿」を理由に証言を拒否したことの是非が争われていた裁判で、東京高裁は17日、「証言の拒絶は正当」と認めた新潟地裁決定を支持する決定を下した。

 ところが、そのわずか3日前には東京地裁が、同様の報道をした読売新聞記者に対し、「証言拒否は認められない」とする正反対の決定を出して論議を呼んだ。取材源が守秘義務を負担している公務員や弁護士などの場合は、法令違反に当たるというのが主な理由だ。

 だが、判例では、記者が公務員に秘密情報の提供を働き掛けることは、手段・目的が相当であれば「正当な業務行為」であり、記者にとって「取材源」は、民事訴訟法に規定された「職業の秘密」として証言を拒めるとされてきた。

 弁護士の猪熊重二氏は「公務員が国費で収集し、国が保管する一切の情報は、本来的に国民の所有に属する。公務員の守秘義務規定にのみとらわれ、記者の取材源秘匿を制限した東京地裁の決定は、東京高裁決定により、その法理論の誤りを根本的に指摘された」と強調する。

 官民を問わず、過去、不正・腐敗に関する多くの情報は、勇気ある内部告発者によってもたらされてきた。しかし、名前が明かされるようになれば、情報提供は困難になるだろう。政治家や官僚にとって都合の悪い情報も、国が「秘密」と決めれば外部に漏らすことができなくなる。権力監視を使命とする報道機関にとって「取材源の秘匿」は、民主主義を支える「報道の自由」と国民の「知る権利」の根幹に直接かかわる生命線なのだ。

 猪熊弁護士は「私たちは、高裁決定が掲げた国民の知る権利を一層確実に実現するために、今後も判例の動向を常に注視していかなければならない」と訴える。

 読売新聞記者は、決定を不服として東京高裁に抗告した。同様に証言を拒否した共同通信記者の裁判も、東京地裁で審理中だ。これらの裁判の行方を注視し、良識ある判断が下されることを望みたい。(落合克志記者)