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(2006年1月17日付)
ヒトラー政権のユダヤ人迫害など、冷酷な人権侵害の事実を知り、ドイツ国内で、ナチスへの抵抗運動を繰り広げたグループ「白バラ」の自由獲得への言論闘争は名高い。
今月公開の映画『白バラの祈り――ゾフィー・ショル、最期の日々』には、その言論運動に身を投じた若き女性の“覚悟と逡巡”が活写され、感銘深い。マルク・ローテムント監督は、冷戦後、東ドイツにあった“ゲシュタポ(ナチスの秘密警察)資料”にいち早く目を通し、迷いなく映画化に踏み切ったという。
1943年、ドイツ。主人公ゾフィー・ショル(ユリア・イェンチ)は、当時21歳。ミュンヘン大学の女子学生だった彼女は、ナチス批判のビラを配布した罪で、兄・ハンスとともに、ゲシュタポに捕らえられ、尋問・裁判を受ける。
その過程が、ドキュメンタリーさながらの緊張感で展開されていく。
生きるために、虚偽の供述を試みるゾフィー。その一方、裁判では、死刑覚悟の弁論を繰り返す。人間らしい矛盾だが、それは信念を貫こうとする気概にほかなるまい。その誇り高き精神にふれるがゆえ、観客の心は揺さぶられるのではないか。
映画終盤の一場面。ゾフィーが牢獄を離れ、死刑を執行される際、兄・ハンスに語った言葉が、耳朶を離れない。
「太陽は輝き続けるわ」
監督は、インタビュー取材の中で「彼女の死後も、その精神は生き続ける。いつの日か、自由が必ずや勝利する、ということ。自由のために命を賭して戦った女性がいたことを、私たちは決して忘れてはならない」と語った。
第2次大戦後、60年以上の歳月が流れ、時代様相は大きく変化したものの、世界の各地では、独裁国家による人権抑圧や虐殺は依然として絶えず、人道は脅かされ続けている。
「現代の課題とは、過ちの歴史を、悲惨な過去を風化させないこと」(監督)――白バラの気高き精神を追体験しつつ、自由や人権の重みを知ることによって、歴史への正しい認識も一段と深まるに違いない。
(光沢昭義記者)
●映画『白バラの祈り』は、28日(土)から、東京・日比谷のシャンテ・シネ、関内の横浜シネマリンほか、全国で順次公開。キネティック配給。