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連載「ニュースの眼」
ニュースの眼

朝日記者が取材メモ捏造、懲戒解雇

すべての報道機関は他山の石に

(2005年9月13日付)

 国内外を問わず、虚偽・捏造(ねつぞう)報道事件が後を絶たない。先月も、朝日新聞が同様の事件を引き起こした。真実を伝えるという報道の原点が、忘れ去られたかにさえ感じられる――。

 総選挙報道が熱を帯びるなか、朝日新聞長野総局の若手記者は、新党結成にからむ田中康夫・長野県知事の動きを追った。記者はその後、知事に直接取材をしたかのようなメモを捏造し、本社政治部にメールで送信。それをもとにした記事が全国版に掲載された。

 記者は「功名心だったかもしれない」と話している。周囲の期待やスクープ競争の心理的重圧のもと、正常な判断ができなかったのかもしれないが、でっち上げ行為は、決して許されるものではない。

 それにしても、なぜ、捏造が起きてしまったのか。その背景・原因を究明することは、何にもまして大切であるに違いない。「長野総局や政治部のチェック体制にも疑問が残る」(毎日新聞)、「田中知事以外の関係者に裏付け取材も行っていれば、虚報は防げたと思われる」(読売新聞)――と“構造的体質”を問題視する論調も多く見られた。

 朝日新聞は今月中に、事件の調査結果をまとめるとともに、「記者教育や会社の風土、制度など根本的な再建策を考える。新聞づくりを土台から改革していく」(秋山耿太郎社長)という。同紙はこれまで、企業の不祥事が起きるたびに、説明責任と社内変革の必要性を訴えてきた。なれば今回、自らその範を示すべき時ではないだろうか。

 この点について、野原仁・岐阜大学助教授(メディア論)は厳しい指摘を加える。「営利優先主義、政治経済権力との癒着、さまざまなタブーの存在といった構造的欠陥をあらためなければ、朝日に限らず、同様の事件はこれからも生起するのではないだろうか」と。

 朝日新聞は、この事件を受けて当該記者を懲戒解雇、本社編集局長と長野総局長には更迭という重い処分を下した。また、箱島信一・朝日新聞社取締役相談役(前社長)も日本新聞協会会長の引責辞任を表明した。

 メディアの信頼回復に向けて、報道関係者は、今回の不祥事から得た教訓を肝に銘ずるべきであろう。朝日新聞の虚報事件は、決して他人事ではない。いずれの報道機関も、他山の石としなければなるまい。 (光沢昭義記者)