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連載「ニュースの眼」
ニュースの眼

“グローバル時代の組織的暴力”の捉え方

カルドー教授『新戦争論』を読む

(2004年1月13日付)

 昨年10月、日本国際政治学会に参加した折にも痛感したことだが、平和について考える際には“冷戦の終焉とともに、戦争の性格が変わった”ことを抜きに論ずることはできない――。ボスニアやコソボ、ソマリアは、地域・民族紛争と位置づけられ、ドイツの戦略家・クラウゼヴィッツの定義した古典的な“国家間の戦争”とは一線を画している。

 そんな思いにたつ中、学会会場で、山本武彦・早稲田大教授から示唆されたのが、ロンドン大学のメアリー・カルドー教授が著した『新戦争論 グローバル時代の組織的暴力』(岩波書店刊)である。本書では、1990年代に始まる戦闘形式を「新しい戦争」と捉え直し、国同士の「旧い戦争」と対比しながら、その中身や紛争解決の方途について論考を加えていく。

 議論の大きな柱となるのは、「グローバル化の進展」である。経済格差の拡大や価値観の同一化は、それを嫌う勢力の中に、文化や民族に根ざしたアイデンティティー(自己同一性)を目覚めさせ、非戦闘員への暴虐や歴史的建造物の破壊といった従来にない戦闘行為に走らせているという。

 注目すべき着眼点は、急速なグローバル化が一方で、排他主義による政治を拒絶する勢力やNGO(非政府組織)、つまり国家や民族の枠にとらわれない集団を生むことにも成功したとする点であろう。国際機関が、それらと連携するとともに、国際人権法と国際人道法に則った武力行使・平和維持活動を実施するならば、戦闘地域の自力再生にとって、有効な手だてとなるにちがいない――著者は、そう指摘する。

 世界に衝撃を与えた9・11テロから約2年半。国際社会はイラク戦争に象徴的な「新しい戦争」の対処法に苦慮している。紛争解決プロセスを再吟味する意味からも、本書の議論を真摯に受けとめたい。(光沢昭義記者)