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(2003年6月10日付)
元ハンセン病患者で詩人の塔和子さんの詩と人生を描いたドキュメンタリー映画「風の舞」(「風の舞」製作委員会、東京シネ・ビデオ製作)が4月に完成、各地で上映会が行われている。
塔さんは、13歳でハンセン病を発病。15歳で瀬戸内海にある大島青松園に強制隔離されて以来60年近く、閉ざされた療養所の中で苛酷な生活を余儀なくされた。30歳を過ぎてから詩作に目覚め、18冊の詩集を出版。1999年には15冊目の『記憶の川で』で高見順賞を受賞し、社会的にも高い評価を得ている。
塔さんは、地獄のような現実をじっと凝視し続けながら、逆に、だからこそ湧き出でてやまない生命の愛おしさ、生きる喜び、希望を詩につむぎながら生きてきた。映画では、女優の吉永小百合さんが塔さんの詩を朗読。元患者らの生々しい証言と懸命に生きる姿を通して、強制隔離の実態を浮き彫りにし、命の大切さや「人間の尊厳とは何か」を問い掛けている。
宮崎信恵監督によれば、この映画は「ただ塔さんの詩にほれ込んだのがきっかけ」で撮り始めた。だが、撮影を進めるうちに強制隔離の歴史を知り、「私たちの社会で、すぐ隣に人間として尊重されない人たちがいた。この事実を、一人でも多くの人に伝えていくことは、“知った者”の責任ではないか」との思いに変わったという。
ハンセン病訴訟の歴史的な判決確定から2年余り。元患者の就労をはじめとする自立支援や、療養所の非入所者に対する恒久対策など、解決すべき課題は多い。ハンセン病問題は、まだ終わっていないのだ。
22日からは「ハンセン病を正しく理解する週間」が始まる。同じ過ちを繰り返さないために、ハンセン病の「歴史」を記録し、後世に残すとともに、元患者の方々の置かれた「現在」を広く伝えていくことは、メディアの大きな責任である。
(落合克志記者)