![]()
(2003年5月27日付)
イラク問題で批判の多かった米外交は今後、国際社会の信頼をいかにして回復できるのか――。ケネディ、ジョンソン政権の国防長官だったロバート・マクナマラ氏が編んだ『果てしなき論争 ベトナム戦争の悲劇を繰り返さないために』(仲晃訳、共同通信社刊)には、そのヒントが隠されているように思える。
いまだ拭えないテロへの恐怖、パレスチナ・イスラエル和平問題や北朝鮮の瀬戸際外交など、国際情勢が予断を許さないだけに、外交舞台の中心にいる米国の動きには、これまでにない期待と不安が高まっている。
泥沼化したベトナム戦争の不名誉な“張本人”と目されてきたマクナマラ氏は「21世紀に国々の間で平和を促進するさいに引き出されるべきいくつかの教訓」を提案しようと、ベトナム戦争の検証を試みる。それも、より客観的な分析をめざすために、当時の米国とベトナムの両政府当局者や専門家を一堂に集め、集中討議を行った。その結果、両国が相手の真意を理解しておりさえすれば戦う意思のなかった事実や戦争回避の機会を逃した経緯が判明するなど、本書は歴史の真実に肉薄している。
翻訳者の仲晃・桜美林大名誉教授は、新保守派の重鎮としてブッシュ政権で権勢を振るうラムズフェルド国防長官とマクナマラ氏を対比しながら、政治外交が歴史に学ぶ必要性を語った。「マクナマラ氏とラムズフェルド氏は、ともに実業界出身であったり、国防総省に独自の戦術・戦略を導入したりと、共通点も多い。だが、マクナマラ氏の歴史に対する真摯な姿勢に対し、ラムズフェルド氏は、歴史を軽視しているようにさえ映る。彼は今こそベトナム戦争の失敗と反省を教訓とすべきではないだろうか」と。
米欧間亀裂など国際政局が混沌とする状況は、6月のエビアン・サミット(主要国首脳会議)を控えてなお、楽観視できない。第2次世界大戦下、英国のチャーチル首相が述懐した「過去のことは過去のことだといって片付けてしまえば、それによって、われわれは未来をも放棄してしまうことになる」との言葉が今、切実に思い起こされる。(光沢昭義記者)