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(2003年5月13日付)
今年1月、米イリノイ州知事が、州内の全死刑囚167人の減刑を発表して話題を呼んだ。きっかけをつくったのは、法律の専門知識も持たない、たった6人の大学生だった――。先月19日に放映(今月4日再放映)されたВSプライムタイム「死刑を中止させた若者たち〜アメリカ 冤罪調査の授業」(NHK BS1)は、この過程を克明に再現した秀作だ。
4年前、ノースウエスタン大学ジャーナリズム学部の学生6人は、調査報道の研究授業で、ある殺人事件を検証する。裁判記録や捜査資料を読み返し、現場に赴いて事件を再現する中で、多くの矛盾を発見。警察に強要された目撃者の証言を覆し、ついには真犯人をも捜し出す。裁判はやり直され、16年半服役していた死刑囚が釈放。さらに州当局が死刑囚の捜査や裁判を再調査した結果、8人もの無実が明らかになり、全死刑囚の減刑につながったのだ。
しかし喜びの後で、学生の一人は問い掛ける。「メディアは私たちのことを持ち上げますが、無実の死刑囚を救い出すのは学生の役割なのでしょうか?」。これこそ、本来メディアが果たすべき役割ではないか。
プロデューサーの一人、(株)パオネットワークの松井秀裕氏は、「学生たちは、担当教授に『すべてのことは、疑ってかかれ』ということを教わっていた。学生たちは事件の調査過程で『何を』考え、『何を』学んでいったのか? それらを“検証”しながら、ジャーナリズムの原点をあらためて見つめ直したいと考え、番組制作を行った」と語っている。
警察発表を鵜呑みにせず、現場に足を運び、どんな小さな疑問も自らの手で一つひとつ解きほぐしていく取材手法。徹して市民の側に立つ視点。学生たちの姿に、ジャーナリストが立ち返るべき原点をかいま見る。
冤罪を防ぐどころか、無責任な報道で、自ら冤罪を生み出すメディアすらある日本において、この作品を通し、彼らから学ぶべき点は多いだろう。(落合克志記者)