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連載「ニュースの眼」
ニュースの眼

時宜を得た元外交官の好著『イラク再生』

中東理解の深化とマスコミ界の課題説く

(2003年4月22日付)

 イラクのフセイン政権が崩壊し、米国による武力行使も終焉を迎えつつある。戦争報道が世界を覆いつくす中、メディアはどれほど、アラブやイスラムへの理解に資する情報を提供できたのだろうか。

 中東情勢に詳しい元外交官の新谷恵司氏は「日本がアジアのリーダーになろうとするならば、当然、中東情勢に知悉していなければならない。ところが、米国を中心とした一面的な情報にとらわれがちになっている」として、このほど『イラク再生』(第三文明社刊)を上梓。日本人に馴染みの薄い文化や風土、政治体制を詳細かつ平易に解説している。

 先日、新谷氏に話を聞いたところ、例えば、フセイン大統領はアラブ人の民族意識を鼓舞するために、“ウンマ”を連呼する。何故か――。ウンマとはアラブ世界(の統一)を意味し、それへの帰属意識こそ、アラブ人のアイデンティティーにほかならない。この言葉を耳にするとき、たとえようのない自尊心とノスタルジーにかられるという。

 また、中東地域の民主化についても鋭い分析を加えている。マスコミは、その必要性を説くものの、踏み込みの甘さが目立つ。湾岸諸国に約10年の滞在経験を持つ氏は、欧米的な民主主義を受け入れがたい理由として、イスラムの教えに基づくアラブ独自の民主的特性を挙げている。

 新谷氏の議論はメディアの可能性にも及ぶ。“民主化の定着は「情報の共有」が不可欠だが、そのためには中東衛星テレビ局アルジャジーラのように、中立性・客観性に基づく報道が重要になる”と。今回のイラク戦争では、日本の大手マスコミはバグダッド報道を専らフリーランス記者に依存し、かつ米英系メディアを併用した。氏の指摘は、日本マスコミへの警鐘ともいえるだろう。(光沢昭義記者)