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連載「ニュースの眼」
ニュースの眼

米国はなぜイラク攻撃をそんなに急ぐのか?

外交問題評議会が時宜に適った論集

(2003年2月25日付)

 国連安全保障理事会を舞台に、イラク攻撃の是非を問う論議が世界中の注目の的になっている。

 『アメリカはなぜイラク攻撃をそんなに急ぐのか?』(朝日文庫)は、米国の有力シンクタンクである外交問題評議会が発行する専門誌に掲載された対論・論文を所収したもので、読ませる。

 例えば、ケニース・M・ポラック上級研究員は、タカ派の「イラクの脅威はすでに切実」との主張、ハト派の「査察と抑止で十分だ」との主張は“ともに誤りだ”と断じる。その上で、今なすべきは「対イラク政策をめぐる手詰まり状況から抜け出す戦略を見いだすこと」すなわち「フセイン政権を打倒し、国際的公約を順守し、隣国との平和共存をめざすイラクの指導者が表舞台へ登場できる環境をつくること」と提唱する。

 この10年余、イラクは16項目に及ぶ安保理決議を無視し続けてきた。生物・化学兵器の所有、核兵器開発の疑惑は晴れない。また、反政府勢力は過酷な弾圧に苦しめられている。にもかかわらず、一部の国は、イラクと石油や軍事関連物品を取引しているという。軽率な宥和政策がナチスの台頭を許した歴史の教訓に照らしても、現状を放置すれば、より深刻な事態を招来するだろうことは明らかだ。

 もとより、従来の国際法の枠組みから逸脱した、米国の単独行動主義や先制攻撃ドクトリンには問題が多い。しかしながら、“反戦一辺倒”の抽象論を安直に繰り返すだけでは、中東地域の安定や人権救済に向け、日本は何ら解決策を示せず、国際社会における責務も果たし得ないだろう。

 イラク攻撃反対を掲げるにしても、「封じ込め」や「巻き返し」に代わる具体的な対案を提示せねばなるまい。その点、本書に収められた各論に見る“外交コミュニティー”の質の高さには、彼我の格差を痛感せざるを得ない。(光沢昭義記者)