【Seikyo Media Page】Copyright (C) 1997-2003 by The Seikyo Shimbun.



連載「ニュースの眼」
ニュースの眼

新刊『「同時多発テロ」の日本への挑戦』

憂うべき国家情報戦略の不在

(2003年1月28日付)

 先制攻撃をも辞さないブッシュ・ドクトリンはじめ、近年の米外交・安保政策は、国際外交の場において各国を翻弄しているといってよい。

 そんな米政府の政策立案に、重要かつ決定的な役割を果たしているのが、シンクタンクである。政策評価、政権への人材供給を含め、その活動範囲は極めて広い。ブルッキングス研究所、ヘリテージ財団、外交問題評議会など、これらは世界的にも有名な機関だけに、ご存じの読者もいるのではないか。

 ワシントンの有力シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)の日本部主任研究員・渡部恒雄氏は昨年、複数の論文をまとめた『「同時多発テロ」の日本への挑戦 ワシントン戦略シンクタンクからの警告』(財界21)を上梓した。政策研究員らしい卓越した分析力を駆使し、米国側の視点から国際問題を平易な文章で分かりやすく論評していて面白い。

 また、本書では、日本の脆弱な国家戦略に対し、ことのほか重い警告を発している。例えば、景気回復の遅れは、テロ防止や北東アジアの安定に多大な影響を及ぼす。経済政策をみても“日本人の安全保障に対する感受性の鈍さが分かる”と、氏は指摘を加える。日本の歴史認識、集団的自衛権の運用など、その提言のすべてに賛同できないまでも、傾聴に値する見解も多い。

 氏の現実的な「戦略思考」には、日本のメディアも参考にすべきところ大であろう。安易かつ近視眼的なマスコミ論調が、どれだけ国民の判断を鈍らせているか――。民主主義の根幹にまつわる問題にもかかわらず、メディアはその重責を果たし得ていない。

 イラク・北朝鮮問題を筆頭に、世界情勢は予断を許さない状況にある。それだけに、日本がしかるべき外交手腕を発揮するためにも、“政策コミュニティー”の構築は急務の課題といえよう。(光沢昭義記者)