【Seikyo Media Page】Copyright (C) 1997-2002 by The Seikyo Shimbun.



連載「ニュースの眼」
ニュースの眼

人権と報道・連絡会が北朝鮮報道の検証本

メディアの在り方を糾す契機に

(2003年1月14日付)

 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)による拉致被害者5人が帰国してから、あすで3カ月。だが、半島情勢は緊迫の度を高める一方で、国交正常化交渉も拉致問題解決も暗礁に乗り上げたままだ。

 この間、メディアは何をしてきたか。「人権と報道・連絡会」編の新刊『検証・「拉致帰国者」マスコミ報道』(社会評論社)は、昨年の日朝首脳会談以降の報道を総括し、未清算の過去と拉致一色報道、テレビを覆う「家族」「ふるさと」の物語とナショナリズムなど、多くの問題点を指摘している。

 拉致帰国者の取材に当たり、メディア側は被害者家族の要望を受けて、集団的過熱取材(メディア・スクラム)防止のための申し合わせを行った。しかし、人権と報道・連絡会の事務局長で映画監督の山際永三氏が「(メディアが)自ら取材相手のコントロール下に入り、メディアの自主性をどんどん喪失していっている」と記した通り、もろさも露呈した。

 また、「欧州で考える『拉致』報道」と題した章では、過去の歴史を踏まえた冷静な海外の報道と、過去の清算を無視した日本のメディアの狂奔ぶりの格差を浮き彫りにしている。

 更に、本書の後半部分では、日朝首脳会談以降の主要な新聞・雑誌報道を日を追って検証しており、興味深い。

 北朝鮮の核拡散防止条約(NPT)脱退宣言などにより、拉致問題も国際社会のより複雑な構図の中で解決を模索しなければならなくなった。メディアにも高度な判断と分析能力、そして的確な報道が求められる。

 この本には、さまざまなテーマが含まれており、個々の記述については異論もあろう。だが本書は、過去の報道を省みて、真にアジアの平和と安定、核や拉致問題の抜本解決に資する報道へと転換するための議論を生み出す糧となるに違いない。(落合克志記者)