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連載「ニュースの眼」
ニュースの眼

在京21社「社会部長会」で自粛を謳ったが…

“人命と外交”に配慮欠いた過熱取材

(2002年10月29日付)

 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)による拉致被害者5人が帰国したのは、今月15日のこと――。報道各社はまたしても、被害者の一挙手一投足を追い回す“過熱取材”に奔走した。在京のメディア21社で構成する「社会部長会」は、帰国に先立ち“節度ある取材”を申し合わせたが、どこまで奏功したのか。

 24年ぶりの帰郷、家族や友人との再会……。拉致問題の解決や日朝国交正常化の進展にもつながるだけに、歴史的意義も深く、喜びの声はやはり多かったにちがいない。だが、読者のニーズに応えるためと、結局、再会写真や家族・友人の声をタレ流すだけではなかったか。疑問が残る。

 この点について、北朝鮮問題に詳しいジャーナリスト石丸次郎氏(アジアプレス大阪事務所代表)は、鋭い指摘を加える。

 「一連の帰国報道は、首相訪朝と拉致問題の意味を歪曲化しかねない。拉致以前への原状回復と真相究明――今後に取り組むべき外交課題を逆に見えにくくしてしまった」

 確かに、歴史的な経緯も含めた厳密な分析・展望など、国民に適切な判断をうながす有益な情報は極めて乏しかった。“世論を迷走させた”との非難も免れまい。「日朝首脳会談から、マスコミはおかしかった。北朝鮮から提示された“生存者・死亡者のリスト”も、未確認のまま発表していた。テレビ、新聞、雑誌とも刺激ある情報を競う余り、“報道の原則”すら決壊するありさま。冷静さを失ったメディアの責任は重い」と、石丸氏は続ける。

 死亡したとされる横田めぐみさんの娘キム・ヘギョンさんに先日、数社が単独取材したが、それも早計な行為との批判を浴びている。人命と外交に及ぶ問題であるにもかかわらず、過剰な取材合戦ばかりが目立つ――“帰国騒動”もまた、マスコミ報道の課題をはっきりと浮かび上がらせた。(光沢昭義記者)