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上海発――新・中国事情

白 雪梅

【1】(2006年9月12日付)


2010年万博へ急ピッチ

「東洋のパリ」から未来都市へ


 上海は私にとって多感な学生時代を楽しく過ごした思い出の地。人生において一つの駅にすぎないこの街は、日本に暮らす今でも時折、故郷にも勝る郷愁に誘われて、機会を見つけては飛行機に乗って訪れる私を、温かく迎えてくれるのです。

 一昔前の上海は、歴史が刻みこまれた古き良き街でしたが、今では世界に冠たる大都会。まるでおとぎ話のように、猛スピードで疾走する近未来都市に変貌しました。スカイスクレイパー(摩天楼)が誇らしげに建ちならぶ浦東地区と、黄浦江をはさむ租界時代のアールデコ建築の連なる外灘、限りない夢とノスタルジーの交錯する空間は言いようもなく愛しく感じるのです。

 「東洋のパリ」とかつて呼ばれた街は、いまなお、成熟した芳しい香りに満ち、ロマンをかきたてます。セピア色の面影が漂う街を散策したり、モダンなレストランで豊かな中国料理を満喫したり、友人と何気ないおしゃべりを交わすひと時は、異国に暮らす私の心をいつも和ませ、また頑張ろうという活力を与えてくれるのです。

 そんな上海のことをお伝えできることは、私にとってこの上もない喜びと感じています。1990年代を境として、改革開放政策の波に乗り、開発特区に指定された上海は、劇的な変化を遂げました。

 アジア一の高さを誇るテレビ塔・東方明珠電視塔や建設当時には世界一といわれた金茂大厦をはじめとする高層ビルが続々と建造され、WTO(世界貿易機関)に加盟を認められた2001年以降にはますます加速、国内はもとより世界中からの上海熱がさらに高まりました。地上100階、492メートルの国際金融センタービルも、2008年の竣工を目指して現在建設中です。

 今一番話題を集めるのは、2010年5月11日から10月末まで開催される上海万博。8月19日に起工式が行われ、街中が期待と活気に満ちあふれています。会場は南浦大橋と盧浦大橋に挟まれた黄浦江両岸。浦東、浦西地区には、長さ600メートル、高さ200メートル、幅50メートルの遊歩道「空中花橋・フラワーブリッジ」が架け渡され、万博終了後もイベントのシンボルとして残される計画です。

 予定される投資額は30億ドル、面積は528ヘクタールで万博史上最大規模となります。予想入場者数は最大7000万人、ちなみに2005年の愛知万博は2200万人でした。上海万博のテーマは「城市 譲生活更美好」、英訳は“Better City Better Life"、日本語では“より良い都市 より美しい生活”。

 150年以上にわたる万博の歴史で「都市」をテーマとして開催されるのは初めてとのこと、中国文化と西洋文明が融合する大都会に相応しい構想です。この世界規模の事業を契機に、水上交通や地下鉄、高速道路などのインフラ整備が、急ピッチで進められています。

 過去と未来、西洋と東洋の混在する多彩な上海の魅力を、日本の皆さまにご紹介することで、留まることなく躍進し続けるアジアの大都市を、もっと身近に感じていただければ幸いです。

 (ラジオ・パーソナリティー)

 はく・せつばい 中国・吉林省出身。上海・復旦大学卒業後、1993年、来日。商社勤務を経て、ラジオ・パーソナリティーに。現在、大阪・FMCO・CO・LOの漢詩教養番組「詩境遊人」を担当。また、カルチャーサロンの講師や、新聞・雑誌コラムの執筆、講演、テレビ出演など、多彩な分野で活躍中。