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メディアのページ

アメリカ中西部から見るメディア社会

大庭絵里

(2005年5月10日付)


犯罪被害者の人権めぐり研究集会

報道で傷つけられる実態


 4月10日からの1週間は「全米犯罪被害者の権利週間」と名付けられ、犯罪被害者支援を訴える様々な行事がミズーリ大学ソーシャル・ワーク学科主催で行われた。犯罪被害者への情報提供と一般市民への啓蒙活動がその目的である。

 一連の催しの中で、「犯罪被害者と報道」というワークショップ(研究集会)がキャンパスで開催された。私は、アメリカの犯罪報道の問題点について言及するように依頼された。

 ワークショップでは、「全米犯罪被害者のためのオフィス」が製作した「犯罪ニュースの報道と被害者化」という教育用ビデオを最初に視聴した。このビデオは、犯罪事件の報道が、いかに被害者の権利を侵し、被害者を追いつめているのか、ニュース報道のどこが問題であり、どのように改善すべきかについて、まとめている。

 メディアが、ドラマチックなシーンをもとめて、執拗にショック状態の被害者(やその家族)を追いかけ回し、被害者のプライバシーを侵害し、不正確な情報を流すなど、米国の犯罪報道が、いかに犯罪被害者の尊厳を踏みにじり、傷つけてきたのか、このビデオは訴える。

 米国も日本もその点では共通している。米国では、こうした被害者には、支援団体からメディア対策のための支援者が派遣される。

 また、支援団体はメディア各社に対して、犯罪被害者の視点を取りいれた記者教育をするように、要求をしているという。

 とりわけ、性犯罪の被害者に対する報道の日米比較がワークショップでの議論の中心となった。

 アメリカの学生は、米国内のメディアが性犯罪の被害者の氏名と写真を報道することに強く憤っていた。特にテレビのトーク番組では、被害者のプライバシー侵害や被害者への不適切な発言、憶測による発言が被害を拡大させている、という。それは日本においても同じである。

 日本で強姦事件の被害者の氏名が新聞記事やニュース番組で公開されることは米国と比べるとあまりないが、一部のメディアでは氏名や写真を掲載していること、強姦をそのまま強姦と表現せず、あるいは強姦の事実を知らせない場合があることなどを私は指摘した。

 これは、一見、被害女性の立場に立ったかのような報道実践として受け取られるが、それは強姦自体が社会的なスティグマ(傷跡)となる日本社会における、妙な配慮であって、日本のメディアが女性の視点に立っているとは言えないことも言及した。

 日本では、被害者側がメディアに対応する際に、弁護士を代理人として依頼する以外に、手だてがあまりないのだが、アメリカでは犯罪被害者支援団体がメディアへの対応を引き受け、あるいはメディアへの対応について助言してくれる。被害者がメディアに登場するか否かは、被害者が決めるべきであると、犯罪被害者の支援者は言う。

 犯罪被害者は、犯罪によってだけでなく、捜査当局やメディアによっても傷つけられる。それを少しでも防ぐための具体的支援の方法が日本にも必要であることを、米国の犯罪被害者支援の運動は教えてくれる。

 (神奈川大学助教授、ミズーリ大学コロンビア校客員研究員)