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アメリカ中西部から見るメディア社会

大庭絵里

(2005年3月8日付)


犯罪ドラマ人気の光と影

偏見や無用な応報感情を生みがち


 アメリカでは三大ネットワークがそれぞれ犯罪をテーマにしたドラマを複数もっている。日本とは異なり、1時間番組で、1話完結型のシリーズである。毎晩、必ず1時間は「犯罪もの」のドラマが各局で放映されており、曜日とチャンネルによっては一晩に異なる2つの「犯罪もの」ドラマが放映される。

 最も視聴率の高い「犯罪もの」ドラマは、刑事の捜査によって犯人を特定化し、法廷で有罪か否かを争う、NBCの“Law and Order(法と秩序)”と、法医学や犯罪科学の知識を用いて事件を解明する、CBSの“Crime Scene Investigation(犯罪現場捜査)【CSIと略す】”である。

 この両局は、これらのドラマが高視聴率のため、次々に同じタイトルのもとで、異なるバージョンのドラマ・シリーズを制作し、放映している。たとえば、NBCの「法と秩序」では、刑事による捜査と法廷を組み合わせたオリジナルのドラマに加え、子どもと女性への犯罪をテーマとしたドラマや、より捜査を中心としたドラマを放映している。

 3月からさらに四つ目のドラマ・シリーズが開始されることになっている。CBSが制作する「CSI」も同様に三つのバージョンがあり、そのうちの一つは現在、「犯罪もの」ドラマの視聴率ではトップである。子どものおもちゃにも「CSI」という指紋採取の道具が売り出され、人気のようである。

 その他、三大ネットワークでは、警察の捜査や人間関係をドラマ化したもの、弁護士を中心としたものなどがある。新種のドラマとしては、霊能者の女性が殺害された人との対話から犯罪捜査に協力するという“Medium(霊媒)”(NBC)があり、これも好評を得ているようである。

 こうした番組は、三大ネットワークだけではない。ケーブル・テレビの中には犯罪捜査専門の番組があるし、映画、ビデオなども含めれば、人びとは、日常的に「犯罪もの」を娯楽として消費しているといってよいだろう。

 さらに、新聞とテレビのニュースでは、ホンモノの犯罪事件が報道されている。

 ある研究によれば、犯罪への不安を多く感じる人びとは、このようなマスメディアにかなりの長時間、接した人びとであるという。人びとが逸脱を許さず、社会統制の厳格化を求めるのも、こうしたメディアによる影響と無関係ではない。防犯という意味では、決して悪いことではない。だが、犯罪が過度に露出する現実感がつくられ、人びとの生活範囲が狭まり、無用な応報感情が高まり、犯罪者への偏見が増幅されるとしたら、問題である。

 犯罪を知りたがる、際限ない視聴者の欲望と高視聴率を期待するメディアは、次々と新しい趣向のドラマを生み出してきた。人びとの関心は、警察の捜査活動による謎解きだけでなく、警察科学の専門的知識や技術に向かい、あるいは霊能者の力に向かう。それらに飽きたとき、いったい何にスリルを感じるのだろうか。犯罪の残虐性を一層生々しく伝える番組を求めたくなるのだろうか。

 「法と秩序」シリーズは、人種問題、同性愛、児童虐待、国際問題などの様々な社会問題を背景として描く人間ドラマとなっている。筆者の個人的見解となるが、好感のもてるドラマである。

 (神奈川大学助教授、ミズーリ大学コロンビア校客員研究員)