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メディア月評

連載コラム
「メディア月評」
創価大学教授・森 幸雄

【9】


市町村合併とジャーナリズム

地域メディアが議題設定に健闘

(2005年3月22日付)

 市町村の合併が盛んである。優遇措置をともなう市町村合併特例法に基づく合併の申請期限が3月末であるためである。

 今回の市町村合併は「平成の大合併」と呼ばれ、近代地方自治制度にとって、明治の大合併、昭和の大合併に次ぐ、3度目の大合併である。3200の自治体を1000に減らすことを目標にして進められているが、今回の市町村合併で自治体数は2000を切る見込みとなっている。

 1999年に改正された市町村合併特例法では合併へのさまざまな優遇措置がとられる。合併後の施設建設に認められる特別債では、その償還の7割を国が負担するし、今後減額が予測される地方交付税について、10年間は合併前の各自治体の交付額全額を保証するなどである。合併申請期限が近づき、今年になってから、合併の動きが激しくなった。

 99年以降、各地で市町村合併が検討されるようになった。市町村合併が話題となり、地方紙や全国紙の地方版、ローカル放送などで報道された。合併件数があまりにも多く、各自治体の事情を反映して合併をめぐる経緯が複雑であるため、全国的な規模での報道は十分にされていない。

 全国的なレベルでの話題となるとネーミング騒動ばかりが目立った。のちに合併そのものが白紙となった南セントレア市や中央アルプス市、別の名称となった太平洋市や湯陶里(ゆとり)市などの新名称である。

 しかしながら、地方のメディアに目を転ずると、今回の合併問題では、各地で合併をめぐる地域の利害得失や問題点が論じられている。その問題に対する意見や態度は異なっていても、メディアの話題が論ずるべき「議題」となった。「議題設定(アジェンダ・セッティング)」と呼ばれる機能を地域のジャーナリズムが果たしている。

 こうした議題設定機能が生かされる場として、各地の住民投票があった。住民投票での判断の基準として、地域のジャーナリズムによる「議題」が重要なものとなった。

 平成の大合併をめぐっては250にもおよぶ自治体で住民投票が実施された。議会の解散や首長の解職などのような制度化されたものではない、条例による住民投票が行われるようになったのは、条例の制定が82年の高知県窪川町がはじめであり、投票が実施されたのは、ようやく96年の新潟県巻町であった。

 82年の時も96年の時も、直接民主主義に基づく制度がようやく実現したとして、町の条例という一つの自治体に限られた問題であったにもかかわらず、詳細に報道されている。

 各地の問題はそれぞれ個別の地域性をもっている。そのため地域問題はそれぞれ異なっているように見えるが、そのなかに日本社会全体が直面している課題が具体的なかたちで表れていることも少なくない。

 たとえば、今回の住民投票では投票権を中学生以上にしたり、永住外国人に拡大する自治体も出てきたとの報道がある。これが「住民」そのものを問い直す動きとなれば、それは日本全体にかかわる問題となる。地域ジャーナリズムの地道な報道・検証が互いに啓発しあったり、全国的な課題として追究されることを期待する。

 (創価大学教授)