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メディア月評

連載コラム
「メディア月評」
創価大学教授・森 幸雄

【5】


災害報道―新潟県中越地震から

復興へ多様な問題どう取り上げるか

(2004年11月23日付)

 新潟県中越地震は10月23日の発生からおよそ1カ月が過ぎた。この地震は大きな余震が続き、被害や影響がひろがりつつあるが、現時点で今回の災害報道で気づいた点を記しておきたい。

 発生直後、災害情報伝達の機能をもっともよく果たしたのは、NHKに代表される放送メディアであった。

 放送メディアは、発生直後から、断片的な情報を提供し始め、リアルタイムで情報提供が可能であるという最大の特徴を生かして、状況を伝え続けた。特にテレビでは、脱線した新幹線や地滑り、土砂ダムの映像が今回の地震のイメージをつくっていった。

 今回注目されるのは、通常は放送メディアが担わない、安否情報というパーソナルなコミュニケーションの機能を放送メディアが代行したことである。

 NHKでは地震発生から1時間ほどたった午後7時15分から安否情報を放送した。放送時間は教育テレビで40時間以上、FM放送で45時間にも及んだという。この安否情報では被災者の氏名だけではなく、他の地域からの安否を問う内容も同時に流した。

 元来、こうした役割は放送メディアには向いていない。にもかかわらず、携帯電話や固定電話、さらには災害用の緊急電話までが使用できなくなり、他の伝達手段が機能しない発生直後の状況でかなりの役割を果たしたと評価できよう。

 しかしながら、個人情報が多くの人の目に触れたことで、新たな問題も現れた。

 従来、災害時には「火事場泥棒」のような犯罪があった。今回は、住所や氏名、連絡先まで知ることができる安否情報をもとに、「オレオレ詐欺」の新しい手口による被害が発生した。

 地震から時間が経つとともに、メディアに求められるものも多様になってきている。

 地震直後には多様な取り上げ方はできなかった。被災者は救出を求め、水や食料などの救援を待っている存在であった。視聴者や読者も、被害に驚き、被災者に同情していた。

 しかしながら、一様に被災者を取り上げることができなくなってきた。被災者のなかには衣食住の生活基盤すべてを失っている人もいるが、直接的な被害をほとんど受けなかった人もいる。地震による問題はそれぞれ異なることがあきらかになってくる。そうした被災者の多様な状態を、メディアは伝えなければならなくなる。

 視聴者や読者の関心も多様になる。直接の被災者や被災地域では、具体的なレベルの情報でなければ役に立たないが、他の人びとにはほとんど必要のない情報である。災害からの一般化された教訓を求める人もいるし、関心を失った人もいる。

 中越地震の報道は単なる被災情報の提供の段階は終わったように思われる。これから次々と現れる多様な問題の中から、何をどのような切り口で取り上げるかによって、メディアの力量が問われる段階へと移行しつつあるといえよう。(創価大学教授)