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メディア月評

連載コラム
「メディア月評」
創価大学教授・森 幸雄

【3】


この秋、雑誌の創刊ラッシュ

新たな価値体系の枠組みを提供できるか

(2004年9月28日付)

 この秋は雑誌の創刊が続いている。「創刊ラッシュ」「創刊ブーム」といわれる状況である。女性誌の創刊の華やかな広告に接する機会が多い。

 この時期に相次いで雑誌が創刊される背景には、景気が上向きになったことがあるという指摘がある。多くの掲載広告が見込めるようになったためである。

 発行部数が20万部以上の女性誌は、20誌もあるといわれるように、既存の雑誌でも競争が激しい。そこで、創刊される雑誌は読者層をさらに限定している。年齢や職業、ライフスタイルなどで絞り込んだ読者を想定することにより、広告の効果を高めようとする営業戦略があるという。

 限定した読者層を想定して雑誌を発行する理由はそれだけではない。人々の関心が多様化しており、多くの人々を引きつけるような雑誌をイメージすることが難しくなっていることも大きな理由である。

 しかし、読者をあまりに細分化し限定するようになると、雑誌の強みである多様性が発揮できなくなってしまう。雑誌のもつ多様性は、ある限定された関心を満たすには向いていない。

 ムックや写真集のほうが、雑誌よりもはるかに夾雑物が少なく、気持ち良く自分の世界に浸らせてくれる。堂々と書店の一角を占めているようになった家具や雑貨の専門店の有料カタログのなかには、写真やレイアウトを工夫して、単なる商品案内ではなく、その世界が楽しめるものも多い。

 また雑誌は、無料の印刷物や、ネット上の情報のようにほとんど費用を意識させないメディアとも競合している。

 たとえば、『R25』のように、無料の情報誌でありながら、「雑誌」とよんでもいいものも発行されている。『R25』は首都圏限定で7月から駅などに置かれている週刊の情報誌である。発行部数60万部、コラム中心で多様な記事があり、レイアウトや印刷・製本もしっかりしている。

 雑誌は、20世紀を通して、時代の特徴をもっともよく伝えるメディアのひとつであった。『ライフ』や『タイム』の表紙を飾った写真は「現代の世界」を象徴するものであったし、日本社会の進路を考えるときに、総合雑誌の論調が大いに参考になった。雑誌は「時代」のイメージを意識させるメディアである。

 また、雑誌はそれまでとは異なる、新たな価値体系の枠組みを提供している。1970年代の『アンアン』や『ノンノ』は、新しいファッションの意味の体系を共有する読者層を形成し、現在の日本社会の特徴である消費社会への転換点となったといわれる。

 最近の状況では、社会の多くの人々とかかわるような雑誌は生まれにくいであろう。しかしながら、新しい価値観が、雑誌と読者から生まれる可能性はある。「汚い」「だらしない」といわれかねないファッションに「ストリート系」として意味を付与し、仲間で共有させて、大きなファッションの流れをつくったのは一群の雑誌であった。

 新たな意味付与をおこない、新しい価値体系をつくりだしていく可能性がもっとも高いメディアは、現在でも雑誌であろう。創刊ラッシュのなかで、そうした雑誌がはたして現れてくるのだろうか。

 (創価大学教授)