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(2000年12月5日付)
長い間、狂牛病といえば、英国だけの問題のように思われていた。ところが最近に なって、大陸側でも次々と狂牛病が報告され始めた。特に、フランス産牛肉の安全性 が疑問視されている。
狂牛病は、一九八六年、英国で発見された、脳がスポンジ状になって死亡する牛の 病気。問題は、同様の症状が出る人間の病気、クロイツフェルト・ヤコブ病が、狂牛 病から感染している可能性が高いことだ。英国政府は長年、両者の関係性を否定しき たが、九六年になって、ようやくその可能性を認めるようになった。
さて、英国産牛肉は、EU(欧州連合)全体で輸入禁止となったことがある。この 措置はすでに解除されているが、フランスだけは今でも禁輸政策を続けている。それ だけに、今こそ報復とばかりに、フランス産牛肉の即時輸入禁止を求める声が、保守 系の人々を中心に国内であがっている。フランスからの輸入の割合は微々たるものだ けに、これは政治的な意図が大きい。日常茶飯事の英仏のいがみ合いが、ここにも顕 著に表れている。
しかし、そもそも狂牛病が大陸にも広がったのは、英国から輸出されていた飼料に 狂牛病の牛も使われていたためだ。インディペンデント紙のあるコラムニストが、 「もし誰かが謝らなければならないとしたら、それは英国であり、それなくして、他 国の対処の仕方を非難できない」と訴えている(十一月二十七日)。
英国には、狂牛病と戦ってきた豊富な経験がある。この国がすべきことは報復など ではなく、被害が広がらないようにその知識を提供し、他国と協力していくことだと 思う。
(有田晴也・英国ウォーリック大学博士課程在籍)