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(2000年9月5日付)
七月、八歳の少女が誘拐殺害されたのをきっかけに、日曜大衆紙『ニュース・オ ブ・ザ・ワールド』が、子供への性犯罪者の実名を写真、市町村名付で公表するキャ ンペーンを始めた。「どこに前科者がいるか親には知る権利がある」という言い分 で、約十一万人いると言われているすべての前科者を「名指しし、はずかしめる」と 意気込んでいたが、すぐに中止に追いこまれた。記事をきっかけに、とんでもない騒 動が国のあちこちで起こったからだ。
公表された何人かの家が、暴徒と化した地元住民に取り囲まれた。投石、放火、落 書き、家族へのいじめ。村八分状態で、何世帯かは住居を追われた。自殺者も出た。 同姓同名であるとか、顔が似ているということで、間違って襲撃の標的となった人、 あるいは前科がないのに新聞社の手違いで写真が載り、同じく標的となった人もい た。現代版「魔女狩り」と評された。
英国では一九九七年、子供への性犯罪者に対し、地元警察への住所登録を義務づけ る法律ができた。彼らの行動は、警察によって監視されているらしい。この新聞が主 張しているのは、犯罪者リストを誰にでも情報公開できるよう、法律を改正すること だ。実名公表のキャンペーンはやめたが、法改正実現へ向け、四十万人以上の署名を 集めている。世論調査でも、八二%の国民が法改正を支持している。
しかし、果たしてそれが、子供を守るための最も効果的な手段となるのだろうか。 犯罪者から更正の機会を奪いはしないだろうか。この夏の一連の騒動を見ていると、 どうも感情が先立っているように思えて仕方ない。 (有田晴也・英国ウォーリック大学博士課程在籍)