![]()
(2000年8月15日付)
五月に行なわれた、英国史上初の直接選挙によるロンドン市長選。労働党を除名さ れ、無所属で立候補したケン・リビングストン氏が勝利し、大きな話題となった。
一九八六年の市議会廃止以来、十四年ぶりにロンドン市政が復活したわけだが、実 はロンドン市長に行政権限はあまりない。権限は交通、警察、消防などに限られ、財 源はほとんど国からの交付金に頼る。新たな通行・駐車料金の徴収以外に課税権はな く、しかも交通改善はロンドンが抱える大きな課題ということで、選挙戦の政策論争 は、もっぱら交通問題だった。
市政がスタートした後も、やはり話題は交通だ。最近、市長が発表した政策案に、 「渋滞税」なるものがある。これはロンドン中心部に乗り入れる一般車両に対し、一 日五ポンド(約八百五十円)を課すことで、渋滞を緩和しようというもの。三年後に 導入予定で、徴収されたお金は公共交通機関の改善に供される。
この案、聞こえはいいが、様々な難しい問題をはらんでいる。例えば、課税区域内 の住民で車を日常利用する人には、たいへんな出費となる。控除が検討されている が、それはそれで、区域のすぐ外の住民には不公平だ。さらに、徴収の技術的問題、 区域外の渋滞の増加など。何よりも、メディアが一様に主張するのは、「導入までに 公共の交通機関がよほど改善されなければ、全体的な支持は得られない。しかし、三 年で改善するのは不可能だ」という点だ。
新しく設置された市議会が、この案の妥当性をこれから検討する。新市長の仕事は 始まったばかりだが、この問題が彼の命運を決するとまで言われている。(有田晴也・英国ウォーリック大学博士課程在籍)