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(2000年5月30日付)
国連本部で開催されていた核不拡散条約(NPT)再検討会議が二十日、最終文書 を全会一致で採択し閉幕した。核保有国による初の核廃絶への「明確な約束」を文書 に盛りこめた点で、これは「重要な一歩」(アナン事務総長)である。しかも、イラ クと米国の妥協に象徴されるように、各国代表はあくまでも全会一致を目指した。結 果として、文書に規範的な重みを与えることができた。
しかし、廃絶の期限が明記されなかったことなど、具体性に欠けることは指摘され ている通りだ。合意の内容がどれだけ実行に移されるかは疑問である。事実、英国の フーン国防相は合意のすぐ翌日、BBCの番組で、現実的に考えて合意がすぐに実行 されるようなことはなく、期待はしないよう警告した。廃絶への動きは「他の保有国 が等しく賛成し、適切な行動をとるかどうかにかかっている」と。核軍縮には相対的 な発想が常につきまとう。
英国は、国益を守るための「最小限の核抑止」という戦略をかかげ、それに従って 二百発弱の核弾頭を保持している。この数は、フランスや中国の半分以下であり、も ちろんアメリカやロシアには遠く及ばない。しかし、これ以上減らす意志も今のとこ ろない。他国の攻撃を抑止できなくなり、安全が保障されなくなるという考えから だ。核抑止論は今だに根強い。
相対性や抑止を強調する現実主義的な考えからすると、規範的な議論はぜい弱に見 える。しかし、これらの考えを変えていくことができるとしたら、その要因となれる のもまた、目に見えない規範の力である。今回のNPT合意文書は、その意味で大き な成果であろう。(有田晴也・英国ウォーリック大学博士課程在籍)