【Seikyo Media Page】Copyright (C) 1997-2000 by The Seikyo Shimbun.



ロンドンの街角から

連載コラム
「ロンドンの街角から」

【10】


核不拡散条約の合意文書 廃絶への規範の力に期待

(2000年5月30日付)


 国連本部で開催されていた核不拡散条約(NPT)再検討会議が二十日、最終文書 を全会一致で採択し閉幕した。核保有国による初の核廃絶への「明確な約束」を文書 に盛りこめた点で、これは「重要な一歩」(アナン事務総長)である。しかも、イラ クと米国の妥協に象徴されるように、各国代表はあくまでも全会一致を目指した。結 果として、文書に規範的な重みを与えることができた。

 しかし、廃絶の期限が明記されなかったことなど、具体性に欠けることは指摘され ている通りだ。合意の内容がどれだけ実行に移されるかは疑問である。事実、英国の フーン国防相は合意のすぐ翌日、BBCの番組で、現実的に考えて合意がすぐに実行 されるようなことはなく、期待はしないよう警告した。廃絶への動きは「他の保有国 が等しく賛成し、適切な行動をとるかどうかにかかっている」と。核軍縮には相対的 な発想が常につきまとう。

 英国は、国益を守るための「最小限の核抑止」という戦略をかかげ、それに従って 二百発弱の核弾頭を保持している。この数は、フランスや中国の半分以下であり、も ちろんアメリカやロシアには遠く及ばない。しかし、これ以上減らす意志も今のとこ ろない。他国の攻撃を抑止できなくなり、安全が保障されなくなるという考えから だ。核抑止論は今だに根強い。

 相対性や抑止を強調する現実主義的な考えからすると、規範的な議論はぜい弱に見 える。しかし、これらの考えを変えていくことができるとしたら、その要因となれる のもまた、目に見えない規範の力である。今回のNPT合意文書は、その意味で大き な成果であろう。(有田晴也・英国ウォーリック大学博士課程在籍)