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週刊誌クリティーク

連載コラム
「ロンドンの街角から」

【3】


ジョン・レノン調査文書の意味

(2000年2月29日付)


 米連邦捜査局(FBI)には、元ビートルズのジョン・レノンに関する非公開ファ イルが存在する。一九七〇年代初め、英国の情報機関・MI5から取り寄せた資料 だ。

 米国で今月十八日、このファイルを一部公開するよう判決が下された。ファイルに は、彼が英国の極左・労働者革命党に資金提供していた事実などが書かれているらし い。

 七一年、レノンは米国へ移住。ベトナム戦争に反対し、彼の「Give Peac e A Chance(平和を我等に)」は反戦運動の主題歌となった。

 当時のニクソン政権は、このひとりのシンガーの影響を怖れ、彼の国外追放を目論 む。その口実を探すべく、FBIは卑劣な方法で彼の身辺を調査。MI5の過去のフ ァイルも、その目的で手に入れた。

 しかし、口実は見つからなかった。FBI独自のファイル(九七年公開)は、陳腐 な調査内容をさらけ出している。MI5のファイルからも、重大な機密が暴露される 可能性はない。

 英紙『インディペンデント』は、FBIの調査が「犯罪や国家の安全という関心よ りも、ニクソンの再選への意志とより深く関係していた」と見ている。レノンによっ て反戦ムードが高まり、再選できなくなることが、ニクソンの一番の気掛かりだっ た。ならば、ファイルの存在は、「権力者の保身」と、そのための「権力の濫用」を 意味していることになる。

 英国はファイルの公開を望んでいない。FBIも上訴を考えている。言い分は、い まだに「国家の安全が危険にさらされる」からだとか。生前、「僕は平和のセールス マンさ」と語っていたレノンは、両国家の欺瞞(ぎまん)と臆病ぶりを、きっと鼻で 笑っているに違いない。 (有田晴也・英国ウォーリック大学博士課程在籍)