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【6】(2006年11月7日付)
大学院生時代に手ほどき受ける |
私は今、アメリカの大学で協同学習がどのように実践されているか、いくつかの大学を視察して回っている。アメリカの大学では90年代に入って急速に協同学習の導入が進んだ。学生たちを学習の主体者として授業に参加させる方法の一つとして、様々な協同学習技法が提案・試行され、追試・検証され、普及してきた。
アメリカ東部の小さな州立大学ウェスタン・チェスター大学では、教員養成課程関連の科目を中心に、多くの大学教員が自らの授業で協同学習を実演していた。むろん、教員養成課程に限らず、様々な分野の教員が、様々な大学で自らの授業に協同学習を採用している。上意下達の典型と思われる軍隊の学校、アメリカ・エアフォース・アカデミーでも協同学習は重要な指導法として認知されていた。
アメリカには様々な高等教育支援機関・組織がある。その中でも有力な団体の一つにPO(Professional and Organizational Development Network in Higher Education)がある。その大会でも協同学習のワークショップが開かれる。
今回、講師を務めたバークリイー教授は昨年、『大学教員のための協同学習実践ハンドブック』という本を出版したが、大学教育関係の書籍の中では売れ筋らしい。サンフランシスコで彼女にお会いしたとき、この本の出版以来、ワークショップの依頼が急に増えて忙しいと話していた。彼女の勤めるフットヒル・カレッジでは、最近採用された教員の半数近くが、古くからいる教員でも3割近くが、何らかの協同学習を授業に取り入れている。
今回の視察で気づいたことがある。イリノイ大学やミネソタ大学など研究重視の州立大学では、何千人という大学院生が学費免除などの特典があるティーチング・アシスタントをしている。ティーチング・アシスタントの主な仕事は教員に代わって、学部の授業を担当することである。
教歴のない彼らに代講させるためには、大学での教え方を教えねばならない。この仕事を担当するのが教育スペシャリストと呼ばれる人たちであり、その組織である教育学習センターである。
教育スペシャリストは、教育関連の博士号を持つ専門家であり、大学教員としての経歴を持つ人もいるが、その主な仕事はティーチング・アシスタントの訓練・指導であり、大学の授業を直接担当することはない。そして彼らが教える教授法には協同学習が含まれている。
つまり、大学教員の卵たちの多くは、大学院生時代に協同学習の手ほどきを受けているのである。むろん、彼ら彼女らが自分の担当する授業で、実際に協同学習を使うかどうか、またどの程度使うかは定かではない。それでも、自分が一人前の大学教員になり、授業改善の必要を感じたとき、選択肢の一つとして協同学習を思い出すことは容易であろう。
学生の主体的な学習を支援する教授法の実践研究は、日本においてはいまだこれからである。創価大学では、協同教育実践研究推進室(仮称)の開設を検討しているが、このような試みは一つの大学に限らず、多くの大学で検討されていって欲しいものである。
(創価大学教授)
せきた・かずひこ 1960年、東京都生まれ。創価大学文学部卒。ウィスコンシン大学大学院修士課程を経て、イリノイ大学大学院で博士号取得。現在、創価大学教育学部教授。同大学教育・学習活動支援センター副センター長。日本協同教育学会副会長。著書に『ソフト・パワー時代の学校教育』、訳書に『学生参加型の大学授業』など。