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(2000年11月14日付)
十月十一日付の主要各紙朝刊が揃(そろ)って掲載した訃報があった。シリマウ ォ・バンダーラナーヤカ(シリマボ・バンダラナイケ)。唯一、囲みで扱う読売新聞 が書くように、スリランカが一九六○年に生んだ世界初の女性首相で、社会主義的計 画経済の推進と非同盟中立外交で知られた。その次女が、九四年から十月に終わった ばかりの総選挙を経て現在に至るチャンドレーカ・バンダーラナーヤカ・クマラトゥ ンガ大統領だ。
六月にニューヨークで開かれた、国連特別総会「女性二〇〇〇年会議」の目的は、 九五年に北京・世界女性会議で採択された行動綱領実施状況の検証だった。行動綱領 を要約すれば、平等・開発・平和の実現の指針となる。そのために最も重要なのは 「意思決定」、政治への参画である。
そして、特別総会を前に青木幹雄官房長官(当時)が述べているように(朝日新 聞・五月二十九日付)、日本はたびたび「国会議員に占める女性の割合は(略)他の 先進諸国と比べると低い」と名指しされてきた。だが、正確に言うなら日本は、アジ アの中だけでも、最も低い部類に属する。
市川房枝記念会が発行する月刊「女性展望」は、毎年一月号に世界女性国会議員比 率(下院)ランキングを掲載する。国連経済社会理事会(ECOSOC)に諮問的地 位を有する「列国議会同盟」(IPU)によるものだ。その最新版(九九年現在)に よれば、日本は百六十四カ国中百二十六位(五・○%)である。
日本より低いアジアの国は数えるほどしかない。そのなかにスリランカやパキスタ ンも含まれる。だが、まったく報じられないが、この二国が位置する南アジアは、ア ジアでもとりわけ女性政治家の活躍が際立ち、女性の政治参画への動きが活発な地域 なのだ。
まず、バングラデシュ、インドを加えた主要四カ国すべて、女性宰相を輩出ずみで ある。ちなみにスリランカに次いで女性首相を生んだのはインドだ。そのほか主要政 党のリーダーをはじめ女性政治家とその予備軍の裾野が総じて広い。国会議員比率が 最も高いのはバングラデシュで八十三位(九・一%)、インドも最新版には出ていな いが、常時九%前後である。
ECOSOCは、九五年までに立法府など意思決定の場の女性比率を三〇%にする 目標を採択していた。その具体的な手段として国際社会でますます注目されるのが、 一定の留保議席を設けるクオータ制である。
インドでは三三%のクオータ制を導入する憲法改正案が、パキスタンでは八八年ま で実施されていた最低一○%復活の動きが、スリランカでもクオータ制導入の検討 が、ここ数年続いている。さらに、七一年の独立当初からクオータ制を採用するバン グラデシュでは、二倍以上(二○%以上)に引き上げようとする議論が高まってい る。現地メディアも熱心にフォローする。
ここから日本を振り返った場合、昨年の統一地方選に続いて、やはり六月に行われ た衆議院選挙は、エポックメーキングといえるものだった。
法定議席数が二十減ったにもかかわらず、女性は三十五議席を占めて、七・三%に 迫る。五%を記録するのさえ長いことかかった経緯を考えれば、まさに分岐点にさし かかっているのだろう。
朝日新聞(十一月八日付)は「ひと」で、第二回全国女性議員サミットを主催した 「女性議員を増やすネットワーク『しなの』」の樽川通子会長を取り上げた。興味深 い記事だったが、サミットの議事録を紙面で読みたいとも思った。
クオータ制度を言い換えれば、アファーマティブ・アクション(積極的是正措置) である。マスメディアが張るキャンペーンには権力批判だけでなく、アファーマティ ブ・アクションのためのそれも、もっとあっていいはずである。
(ジャーナリスト)