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日本マスコミ検証

日本マスコミ検証−国際人権法の視座から
ジャーナリスト・関口千恵

【3】


子どもの権利に鈍感な主要メディア
買春、ポルノ、臓器摘出…少ない報道量

(2000年10月17日付)


 子どもの権利条約発効十周年の今年五月、その選択議定書が国連総会で採択され た。

 選択議定書は二つある。武力紛争下の子どもに関するものと、子どもの人身売買全 般および子ども買春・子どもポルノといった商業的性的搾取に関するものだ。

 ▼児童買春の最たる加害国・日本

 選択議定書が成立した背景には、一九九六年にスウェーデンで開かれた「子どもの 商業的性的搾取に関する世界会議」があった。百二十二カ国の政府代表、二十の国際 機関などが参加した会議で主要な役割を果たしたのは、タイに本部を置き三十五カ国 をネットワークする国際NGO「アジア観光における子ども買春根絶キャンペーン (略称エクパット)」である。その会議で、最たる加害国のひとつでありながら何ら 対策をとっていないと非難の矢面に立たされたのは、ほかならぬ日本だった。

 昨年成立した、いわゆる子ども買春・ポルノ等処罰法(以下、処罰法)は、同会議 を受けた超党派の女性議員が中心になって提案したものだが、そこに至らせたもの は、エクパットと連携しつつ粘り強くはたらきかけてきた日本のNGO諸団体の努力 だった。

 子どもを商業的性的搾取する側の責任を問うということで画期的な意義があった が、積み残した課題も多い。一例が、急増するサイバーポルノへの対処だ。同法は二 ○○二年に見直す予定だが、それ以前の二○○一年には、第二回世界会議が神奈川県 で開かれる。

 これは、おそらく前回を上回る国々からの参加者の前に、日本の実情がさらされる ことでもある。前回会議の副議長を務めたエクパット名誉議長のロン・オグレディ氏 は「日本は子どもポルノの最多生産国」とたびたび指摘している。

 こうした前提から選択議定書関連の報道を振り返ると、まず実感されるのは、報道 量の少なさとともに現状認識の希薄さだ。朝日新聞を例にとると、選択議定書の基本 合意(二月五日夕刊)、国連人権委員会採択(三月二十四日夕刊)、ミレニアム・サ ミットでの調印・批准(九月十日)などほとんどベタ記事扱いである。

 また、特に緊急性が高く深刻とみなされる権利侵害の条項を発展させたものなの に、その説明が全くない。日本で処罰法ができたとはいえ、そもそもが遅きに失して いたわけで、今回また国際人権水準から大きく水をあけられた事実が、まるで伝わっ てこない。

 対して、国際通信社に依存する率が高いとはいえ、その記事の選び方だけをとって も、総じて最もセンスがあるのは英字紙の『ジャパンタイムズ』だ。

 ▼臓器摘出目的の人身売買の恐ろしさ

 ただし、同紙もこれまでのところ触れていない問題がある。選択議定書の人身売買 関連の条項では、性的搾取や強制労働目的とともに、臓器摘出目的が特に挙げられて いる。

 前二者にもまして実態がつかみにくいものの、ブラジルほか中南米で最も被害が深 刻だとして、国連や欧州議会などが八〇年代から問題視してきた。誘拐・売買される 子どもから摘出される臓器の主たる「市場」は欧米と見られる。中南米に次ぐ被害地 域は南アジアで、私も、現地の弁護士やNPOの取材を通じて、国連児童基金(ユニ セフ)への報告書を受け取ったことがある。他方、日本ではこの十月から臓器移植法 改正の動きが本格化する。厚生省委託研究班による“改正”案は、脳死状態の十五歳 未満からの臓器摘出を、本人の意思表明がなくても親の同意があれば可能とする(八 月二十三日付読売新聞ほか各紙)。

 札ビラを切って子どもを性的搾取することにじゅうぶんな「前科」をもつ日本が、 臓器摘出目的の人身売買に荷担することは絶対にないと言い切れるだろうか。『サン デー毎日』が九〇年代初めに取り上げたことがあったが、続いていない。報道の役割 には、中長期的・有機的視点から問題を先取りする作業も含まれるはずだ。

(ジャーナリスト)