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タイトル画:検証:構造改革報道

検証:構造改革報道 高橋文利

【11】


郵便民間参入は本物か
国会審議を形骸化させる事前審査制

(2002年5月14日付)


 郵便事業に民間が参入できるようにすることなどを盛り込んだ郵政関連法案が国会に提出された。これは三重の意味で、異例である。

 ▼国民向けの芝居ではないか

 第1に、郵便事業に民間参入を認める信書便法案が自民党の事前承認を経ずに国会に提出されたことだ。第2に、自民党は法案の国会提出は認めるが成立は見送りにすると伝えられていることだ。第3に、政府の法案提出直後に、最右翼とみられていたヤマト運輸がいち早く「参入断念」を表明したことである。

 この一連の動きをみていると、郵便事業への民間参入が本当に行われるのか、法案提出は小泉内閣の国民に向けた芝居ではないのかとさえ思えてくる。

 ところが、各紙の社説は「族議員と妥協するな」(4月21日付朝日)、「事前審査制に風穴開けるか郵政法案」(4月27日付日経)といった具合に法案提出そのものにエールを送っているだけで、極めて単純な見方しかしていないことに驚かされる。

 折から、小泉内閣は発足1周年を迎えたことから「言葉だけの時期はもはや過ぎた」(4月25日付読売)など、こちらは手厳しい評価が一般的だ。雑報や続き物でも「しぼむ小泉バブル」(毎日)など総じて批判的な記事を載せている。この落差は一体どこから生じているのだろうか。

 政府には法案提出権があるのだから、もともと与党が事前審査をすること自体おかしい。ところが、自民党では政調会、総務会の事前承認がなければ法案の国会提出を認めないという政治慣行がこれまで続いてきた。

 自民党内には「議院内閣制だから当然だ」という意見もあるが、議院内閣制の本家イギリスでも事前承認などという手法はとられていない。永田町の常識は世界の非常識なのである。

 ▼自民党内で弱まる首相の求心力

 そもそも事前審査制は、首相のリーダーシップを損なううえ、族議員の不透明な影響力を助長させる半面、国会審議を形骸化させるなど弊害が大きいことから、小泉首相直属の自民党国家戦略本部国家ビジョン策定委員会が3月に改革案を出していた。

 改革案は(1)首相を中心とする内閣主導体制の構築(2)官僚主導の排除(3)「族議員政治」との決別という「小泉3原則」を踏まえたもので、政策決定を内閣に一元化することが強調されていた。しかし、4月に開かれた自民党の国家戦略・政治制度改革・行政改革推進3本部の合同会議の結果、改革案は将来の課題として先送りされることになった経緯がある。

 その意味では、郵政関連法案の提出は確かに異例ではある。しかし、法案を国会に提出するだけで審議もせずに棚ざらしにするというのでは、従来の自民党の手法と本質的に何ら変わりはない。単に郵政事業の民営化を持論とする小泉首相の顔を立てただけであり、国民を愚弄するものだと言わざるを得ない。

 小泉首相は法案を「成立させることだけしか考えていない」と言い切り「自民党が小泉内閣をつぶすか、小泉内閣が自民党をつぶすかの戦いだ」と意気軒昂だが、支持率の低下とともに自民党内における首相の求心力も弱まってきた。

 そのうえ、ヤマト運輸の「参入断念」である。信書の集配を全国均一で提供できるのはヤマト運輸ぐらいしかないというのに、法案の内容ではハードルが高すぎて民間企業は参入できないという。

 民間企業が参入できなければ、法案自体意味がない。メディアの小泉改革批判は、いまやファッション化していて緊張感がなく、説得性にも欠けるきらいがあるが、この問題に関しては国会論議などを通じて国民の目に見える形での透明性を確保する役割をきちんと果たしてもらいたい。(立命館大学教授)

(立命館大学教授)