![]()
(2002年4月9日付)
BSE(牛海綿状脳症いわゆる狂牛病)問題の調査検討委員会が4月2日「農水省に重大な失政があった」とする最終報告書を出した。
この委員会は学者、消費者団体の代表、ジャーナリストらで構成され、審議は構内テレビの中継放送で公開された。報告の文章も、官僚の干渉を防ぐために委員自身が執筆したから、これまでの審議経過がよくわかった。
問題の根幹は「政」と「官」が癒着して「業」を保護してきた行政の仕組みにあることは明らかだ。報告書の原案を報じた朝日新聞3月23日朝刊によると「農林水産省の政策決定に最も大きな影響を与えているのが自民党を中心とする農水族議員である」と明瞭に言い切っている。
その後の各紙の報道を総合すると「特定政党を名指しする必要はない」ということで「政官癒着が政策決定の不透明性を助長してきたと考えられる」と書き換えられた。このくだりは岩淵勝好委員(産経新聞論説委員)が執筆したものだが、他の委員から異論が出て「そのような政と官との関係が政策決定の不透明性を助長し、十分にチェック機能を果たせない原因となった」と直され、「癒着」表現も消えた。
4月3日付各紙社説は「重大失政の責任はこれで十分か」(読売)、「白紙から出直せ」(朝日)、「提言はいいが検証不十分」(毎日)、「農水省の生産偏重・閉鎖体質を改めよ」(日経)と一見厳しい論調だが、「政と官」の責任問題で論議が拡散したことをもっと掘り下げて糾明すべきだったろう。
同日の朝日新聞は小泉内閣の不支持率が44%に上昇し、支持率40%を上回った世論調査の結果を載せている。翌4日付社説は「小泉神話は消えた」とすでに引導を渡した形である。
実は、外国のメディアには小泉改革の前途をとっくに見限ったかのようなものが目につく。
ニューズウイーク日本版は3月13日号で「日本経済衰弱のシナリオ」を特集したのに続き4月3日号では強烈な風刺漫画を載せている。「構造改革」と書かれた大きなカボチャを引っ張るのはなんとネズミの群れだ。それぞれが勝手な方向に引っ張ろうとしているから、当然進まない。日はとっぷりと暮れて、お寺の鐘がゴーンゴーンと鳴っているが、小泉首相は動かぬカボチャの前で途方に暮れ、膝を抱えて座り込んでいる。
前回、米タイム誌がほろりと涙を流す芸者を表紙に載せて日本特集をしていることを述べたが、英エコノミスト誌2月16日号が同じように日本女性が泣いている顔を表紙にしていたのには偶然の一致とはいえ驚いた。
エコノミスト誌の分析は鋭い。小泉内閣は改革案を示しただけで実際には何も実行していないから、何も変わっていないと指摘する。
抵抗勢力は国民の間でも改革が決して歓迎されていないことを見抜いており、世論調査で改革を支持するというのは建前に過ぎず、いざ総選挙ともなれば有権者の多くは「痛みを伴う改革」を拒否するはずだから、当面は改革派の首相をかついで国民の建前を満足させておけばいいのだとたかをくくっているというのである。
世論の支持を背景に、抵抗派を抑えて改革を断行するというのが小泉改革の戦略であった。そのためには景気を一時犠牲にしてでも将来に展望を抱かせる「思い切った改革」をするはずだったが、いまやその土台が崩れ始めたようだ。監視役としてのメディアの役割が一段と重要になってきた。(立命館大学教授)
(立命館大学教授)