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(2001年11月13日付)
小泉内閣が「構造改革」を旗印に掲げて発足してから10月26日で半年が経過した。この時点で主な全国紙の論調を点検してみよう。
各紙の社説の見出しだけ取っても「いまだ見えぬ経済再生の展望」(読売)、「改革の実を見せる時期だ」(毎日)、「求められる改革の成果」(共同)といった具合で、看板通り進まぬ「小泉改革」にいらだちを示していることがわかる。
といっても中身には温度差があり、各紙に微妙な差異が窺われる。朝日は「改革の原点を忘れるな」として、「ここでひるんだり後退したりしたら、この10年間の失敗の繰り返しになるだけだ」と既定路線をあくまで貫くよう激励している。
ところが、日経は「原点を確認し『小泉改革』立て直せ」と同じような見出しだが、中身はかなり違う。「小泉改革は制度の見直しが進まずに受け身に回り、首相のメンツを保つための数合わせに追われ始めている。ここで立て直さないと政権の命綱である国民の支持を失いかねない」と強い調子で警告を発している。
財政健全化へのシンボルでもある「国債発行枠30兆円以下」についても「目標にこだわると、必要な政策まで排除し、柔軟性と機動性を失いかねない」から「第2次補正の編成もためらうべきではない」と首相に「変節」を要求しているのだ。
読売はもっと単刀直入に「経済危機を克服するための政策には見るべき実績がほとんどない」と言い切り「国債発行枠を30兆円以下に抑えるという公約に固執する状況にないことは、首相もよく認識しているはずだ」と断定している。そして「大胆に政策転換」しない限り「首相の掲げる構造改革も絵にかいた餅になる」と、これは恫喝ともいえる論調である。
日経は5人の評者に小泉政権発足半年の採点をさせている(10月25日朝刊)が、AからEの5段階評価でB、Cが各2人、Dが1人だ。人選も恣意的だが「ダンサーが一人で踊り、踊り疲れて、見ている観客(国民)も飽き始めている」という伊藤忠商事社長の言葉は、国民に名を借りて全く個人的な意見を述べているにすぎない。
景気の予想以上の悪化が根本にあることはいうまでもない。日本経済は今年度のマイナス成長がはっきりし、株価が低迷、失業率も最悪水準を更新している。米国経済の減速を受けて来年度もマイナス成長の懸念が強まっている。
だが、これを理由に変節を迫るのは、テロや経済の悪化を口実にして構造改革にブレーキをかけようとする自民党守旧派にとっては思うつぼだ。
社説を書いている本人は意識しているかどうか知らないが、道路公団をはじめとする特殊法人の改革に抵抗する官庁や族議員と同類だといえる。
経済政策と構造改革は別だというかもしれない。しかし、国債発行枠、特殊法人改革、不良債権処理、特定財源見直し、規制改革といった一連の「小泉改革」はワンパッケージなのだ。ダムの一部にひびが入ると決壊の危険が出てくるのと同様、全体が崩壊する可能性が大きい。
国債発行枠30兆円は補正予算の編成ですでに上限に達しているのだから、2次補正を編成すれば突破することは目に見えている。特殊法人改革などに抵抗する守旧派勢力はそこにつけこんで「首相の背信」を国民に植え付けようと手ぐすね引いているのが現状だ。
過去10年以上にわたって巨額の資金を景気対策に投じたにもかかわらず、効果がなかったからこそ構造改革が必要になったはずだ。メディアはそこに思いを致し、短兵急な主張を慎むべきである。
(立命館大学教授)