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タイトル画:検証:構造改革報道

検証:構造改革報道 高橋文利

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政府が「改革工程表」と「改革先行プログラム」案
いらだつメディアに必要な寛容さ

(2001年10月9日付)


 臨時国会が召集された。本来なら今年度補正予算案や雇用対策など「小泉構造改革」に伴う景気対策や安全網づくりが焦点になるはずであった。ところが、米国での同時中枢テロを受けて自衛隊法改正など「危機管理」が当面の争点に浮上してきた。しかし、構造改革も胸突き八丁にさしかかっているだけに、抵抗勢力などへのメディアの監視がいよいよ必要になってきた。

 ▼おしなべてクールだった全国紙の評価

 政府は9月21日に小泉改革の実行に向けて具体的な手順を示す「改革工程表」と、緊急対策として優先的に取り組む「改革先行プログラム」案を決めた。竹中経済財政担当相は「こんなものを政府が作って公表するのは初めて。小泉改革が着実に進みだしたという重要なメッセージがこめられている」と自画自賛している。

 ところが、9月22日付朝刊各紙は、見出しだけ拾っても次のようにおしなべてクールだった。「実現に高いハードル 証券、医療踏み込まず」(読売)、「民需創出は疑問 危機感欠如あらわ」(朝日)、「揺らぐ改革イメージ 証券・福祉で目玉欠く」(毎日)、「経済再生へ迫力欠く 不良債権処理 市場と認識かい離」(日経)…

 これは構造改革に対するメディア側のいらだちを表明したものといえる。

 この時点でメディア側には「工程表づくりに時間がかかりすぎた」という思いが強かった。内容的にも不満のそしりを免れないことは、株式市場などの冷淡な反応からも見てとれると判断したであろう。

 経済財政諮問会議が「経済・財政運営の基本方針」(骨太の方針)を決めたのが6月末。工程表は当初、8月下旬から9月初めにとりまとめる予定だった。しかし、各省庁が出してきた原案は抽象的なものが多く、実施時期も明確でなかった。

 途中経過を報じた日経によると、塩川財務相は「各省庁が権益の確保を目指し、改革のピックアップが遅れとる。竹中さんも、ようさばかへん」と怒りをぶちまけたという(9月5日朝刊)。

 ▼抵抗勢力などへの不断の監視が必要

 骨太の方針は、今後2〜3年間を「集中調整期間」と位置づけ、0〜1%程度の低成長を甘受するとしている。だが、失業率の増加や株価の低迷に加え、予想だにしなかった米国テロ事件の影響で世界同時不況色が日増しに濃くなるなど、根本のシナリオそのものが崩れようとしている。小泉政権の危機意識の欠如が指摘されてもやむをえない場面ではある。

 しかしメディアにも、時には寛容さが要求される。工程表と改革先行プログラムによって、小泉内閣発足以来の「聖域なき構造改革」の全体像がようやく明らかになったことは評価されていい。改革は実行段階に入ったのである。

 先行プログラムの目玉ともいうべき銀行の不良債権処理問題に焦点をあててみよう。

 大手スーパー、マイカルの経営破綻が明らかになったが、銀行はマイカル向け融資を不良債権まで悪化していない「要注意先債権」に分類していた。なんとも甘いものである。これにこりてか「改革工程表」に盛り込まれた政策は、株価が急落したり格付けが大幅に引き下げられたりした企業への融資について、金融庁が主要行を特別検査し、隠れている不良債権を洗い出すことにした。

 特別検査で破綻懸念先に分類された企業は法的手続きによる再建に加えて、整理回収機構(RCC)などへの債権売却で再生・処理される仕組みだ。

 問題は、RCCが銀行から買い取る不良債権の価格だ。実勢価格でなく簿価で買えば銀行には有利で不良債権の切り離しは進む。だが、RCCとしては担保不動産などを売っても買い取り額を回収できずに損が出るから、税金で穴埋めすることになる公算が大きい。

 毎日新聞は遅ればせながら9月25日付社説「これが最後と覚悟せよ」で、こう書いている。「ジレンマだらけの不良債権処理だが、かつて証券業界がやり玉にあげられた損失補てんや飛ばしを国家的規模でやることだけは避けてもらいたい」

 メディアの不断の監視が必要となる所以である。

(立命館大学教授)