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米国ジャーナリズム時評

【55】

アラファト後のパレスチナ情勢

(2004年11月9日付)

 11月4日、米メディアでは大統領選挙後の興奮がいまだ冷めやらぬ雰囲気であったが、パリで病気治療中のパレスチナ自治政府のアラファト議長が死亡したとの情報が流れるとそのムードも一変した。

 アラファト氏が死亡したと誤認したルクセンブルク首相の発言を報道したAP電が流れたのは、奇しくもブッシュ大統領再選後初の記者会見中。会見に出席中に携帯機器で同電を知ったワシントン・タイムズ紙の記者が質問の最中にアラファト死亡説を大統領に伝え、大統領はまだ存命中の議長に対するお悔やみを述べる結果となってしまった。

 しかしアラファト議長が重体で回復の見込みがないことが明らかになってくるにつれ、米メディアではアラファト後の中東和平を見据えた議論が始められた。各紙一様にアラファト後の指導者空白時の混乱を懸念したが、一般投票による指導者の選出が重要と指摘したのはロサンゼルス・タイムズ紙(5日付)。

 アラファト氏の死後、アル・ファタ、ハマスなどの組織間で話し合いが行われ、衝突を避けるための暫定的な合意が得られるだろうが、こうした合意は求心力のある指導者の欠如を一時的に目隠しするだけのものであり、中東和平にからむ困難な妥協と決定を下すには選挙によって選出された正当性のある指導者が必要であるとした。

 他方、クリスチャン・サイエンス・モニター紙(5日付)は、権力の空白期間によって和平プロセスが妨げられる恐れがあるとしながらも、ブッシュ政権とイスラエルのシャロン政権の双方が和平への障害とみなしていたアラファト氏の死は、交渉再開の好機となるという切り口で専門家の意見ほかを掲載した。

 アラファト後、和平の道のりは厳しくなるか、それとも突破口が開かれることになるのか定かではないが、いずれにせよ新ブッシュ政権はこの機会を逃さず、しばらく遠ざかっていた中東和平への仲介役としての役割を果たすことが望まれる。(椎名亜由子・在米ジャーナリスト)