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(2004年10月26日付)
計3回の大統領候補討論会も終了し、大統領選はいよいよ大詰めを迎えた。ブッシュ、ケリー両候補が直接対峙し、全国民に持論をアピールする機会はこれが最後で、今後、国民の投票意思に影響を与えるとすればイラク情勢の新しい展開など、外的要因による部分が大となる。米国の有権者の投票意思はすでに固まっていてしかるべき時期だが現状はどうだろうか。
討論会後、日本のメディアが世論調査や米メディアの報道をひいて、「ケリー優勢」と報道しているのを目にしたが、実情はケリー候補にとってそう甘くはない。確かに計3回の討論会でケリー氏は、時に苛立ちを見せて言葉に詰まるブッシュ大統領と比べると冷静さを失わず、討論の仕方を十分に心得た対応ぶりで好印象を残した。
第1回討論会直後のCNN・USAトゥデー紙・ギャラップ社合同世論調査では、討論会でケリー氏が善戦したと回答した人は53%で、ブッシュ氏の37%を大きく上回った。
しかし同じ世論調査で、好感度の高いのはケリー氏と答えた人は41%であったのに対して、ブッシュ氏と答えた人は48%、大統領として頼れるのはケリー氏と答えた人は、ブッシュ氏の54%に対して37%という結果も出ている。有権者に影響を及ぼすのは討論での技量そのものより、候補者のイメージであるというのはケネディ、ニクソンの時代から変わらないようだ。
またこの時期、米国の各紙は論説で支持候補を表明するが、21日付の業界向け月刊誌であるエディター&パブリッシャー誌の統計によると、ケリー氏支持が58紙(発行部数950万部)、ブッシュ氏支持が45紙(発行部数553万部)とケリー氏が大きくリードしている。
しかし、例えばケリー氏支持を表明した有力紙、ニューヨーク・タイムズ紙の17日付の論説を見ると、書き出しと結びこそケリー氏のプラス面を称える内容だが、残り8割はブッシュ大統領の問題点を指摘し、ブッシュ大統領の「disastrous(ひどい、散々)」な仕事ぶりを強調する内容となっており、ケリー支持というよりも反ブッシュの色合いが濃い。
支持候補を表明していないロサンゼルス・タイムス紙の18日付の論説では、ケリー氏のエネルギー政策を取り上げて、非現実的であると同時に提唱する方策をいかに実現するかの方法論についても非常に曖昧であると指摘、ブッシュ大統領の計画は「空疎で有害」であるのに対し、ケリー氏の政策は「空疎で無害」であると論じており、ブッシュ大統領の政策を批判する姿勢は明らかだが、ケリー氏支持ともいえない。
大詰めを迎えて、まだ新たな論議の火種も見え隠れしている。宗教家であり、ブッシュ大統領支持者としても知られるパット・ロバートソン氏は19日夜のCNNの番組に出演し、イラク戦争直前に話をした際、「大統領はイラク戦争による米軍の死傷者は一人も出ないと発言した」と述懐した。
ブッシュ陣営はロバートソン氏の記憶違いであると話のもみ消しに躍起になっているが、イラク戦争に対する大統領の認識の甘さの表れとして物議をかもしている。
時を同じくしてNYタイムズ紙もイラク戦争の問題点を綿密な取材であぶりだした特集記事を3日間にわたって掲載し、国防総省トップがイラク駐留軍の数を抑えることを決定したための対価がどれほどのものとなったかなどを詳細に報道、奇しくも大統領選直前になって再びブッシュ陣営のイラク戦争における問題点が注目を浴びる事態となっている。
こうした事象から見え隠れするのは、メディアや有権者の中での反ブッシュ感がさらに高まりつつある傾向だ。しかしケリー陣営にとっての問題は、ブッシュ大統領離れがケリー氏支持に直結しない点にある。
ケリー氏の側も今までの選挙活動を通じて、自らをアピールできる魅力的な政策、イメージを国民に提供してきたとは言いがたい。その点が今回の大統領選にあたって米国民に苦渋の選択を強いる原因となっている。
21日時点で、APほか大半の世論調査では、両候補支持が拮抗しているか、もしくはブッシュ氏支持がややリードしているという結果がでている。接戦となった前回の大統領選よりもさらなる接戦が繰り広げられることとなりそうだ。
(在米ジャーナリスト)
しいな・あゆこ 上智大学新聞学科修士課程、ミネソタ大学ジャーナリズム学科修士課程修了。研究テーマは国際コミュニケーション論と、主にインドネシア、東南アジアにおける言論の自由。現在はニューヨークに在住し、リサーチャーとして活動する。