【Seikyo Media Page】Copyright (C) 1997-2004 by The Seikyo Shimbun.



米国ジャーナリズム時評

【53】

偽造だった大統領の「州兵義務不履行」文書

(2004年9月28日付)

 CBSは20日、メーン・アンカーであるダン・ラザー氏が司会をする看板ニュース番組「60ミニッツ」が8日に報道した、ブッシュ大統領の州兵勤務に関する疑惑について、その根拠として使用された文書が偽造されたものであることを認め、謝罪した。

 放送時から、不自然な点が目立った報道だった。案の定、放送から4時間以内に、ブロガー(ウェブログを運営する人々)たちが、30年前の電子タイプライターで作成されたとは思えないモダンな印字があるなど、文書の真贋に疑問を呈し始めた。

 彼らは文書真贋判断のプロでもなく、ましてや右派であれば、その政治的意図にも疑問が残る。いずれにせよ、他に先駆けてCBSの報道の問題点を指摘したのは、またしてもブロガーたちであったということだ。

 この時点でもCBSは自身の報道の正確さを主張していた。文書を作成されたとされる上司(故人)の元秘書が偽造文書でないかと発言した後、ようやく文書偽造の可能性を認めたが、その時点ですでに放送から1週間が経過していた。この対応の遅れも、CBSへの批判を大きくした原因の一つだ。

 ブッシュ大統領の州兵勤務については疑惑が多いことも確かで、今までにも、いくつかそれを証明するような報道がなされてきた。影響力のある一族が息子が兵役に際して特別待遇を受けられるよう手配することは、ベトナム戦争時代、頻繁に行われていたし、ブッシュ一家もまた例外でなかったと考える人は多い。

 ダン・ラザーが、「文書が偽造であったとしても、正しい志のもとになされた報道であったと信じる」と発言した背後には、彼自身がこうした論を支持していたこともあるかもしれない。しかし、それが証拠の真贋を十分にチェックせずに行った報道に対する言い訳にはならない。

 今回の番組プロデューサーは、イラクのアブグレイブ刑務所での囚人虐待の写真を発掘した、CBSでもトップクラスの調査報道プロデューサーだ。それだけに、放送前のチェックの際に2人の文書鑑定家から疑問が呈された文書を、自分たちの望む結論に報道を導きたいがために使用した判断の甘さが悔やまれる。

 (椎名亜由子・在米ジャーナリスト)