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米国ジャーナリズム時評

【48】

話題呼ぶ映画「華氏911」

(2004年7月13日付)

 ブッシュ政権に痛烈な批判を加えた、マイケル・ムーア監督によるドキュメンタリー映画「華氏911」は公開2週目にしてすでに興行収入6100万ドルを上げ、過去のドキュメンタリー映画の全米の興行収入記録を軽々と塗り替えた。従来、限られた集客力しかないと考えられてきたジャンルの映画が、上映館数も少ない中でこれだけの収益と話題を集めていることは、ドキュメンタリーに対する見方を揺るがす事態となっている。

 ムーア監督の作品に限らず、全米で収益を上げられるジャンルとなりつつある近年のドキュメンタリー映画だが、「華氏911」に集約されるその特徴は、監督の意見が色濃く反映された内容となっている点だ。従来、ドキュメンタリーといえば、事実を積み重ねて検証するといった手法が伝統的であったが、「華氏911」では事実と憶測の域をでない現政権に対する非難をないまぜにして、主観的なムーア流の政権批判が繰り広げられる。

 従来のドキュメンタリーがストレート・ニュースに近かったとすれば、この映画はOp―Ed(意見・評論)欄の記事といったところだ。そのため、大半のメディアでは、作品として評価し、監督の意見に同調しつつも、ドキュメンタリーとはよべないのではないか、プロパガンダ(宣伝)の類に近いという声も多く聞かれる。

 また、現在公開されている「Super Size Me」は、監督自ら1カ月3食マクドナルドを食べ続けるという食生活を続ける様子を取り続けたものだが、マクドナルドに訴訟を起こされることを恐れる会社が続出したため、配給会社探しは困難を極めたという。新たなドル箱ジャンルは、新聞社のように事実をチェックする編集者が存在しない映画配給会社にとって新しい問題を提起しているようだ。

 (椎名亜由子・在米ジャーナリスト)