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米国ジャーナリズム時評

【47】

胚性幹細胞使った研究で論争

(2004年6月22日付)

 過去10年間、アルツハイマー病を患ったレーガン元大統領の死去に伴い、胚性幹細胞(ES細胞)を利用した研究の是非をめぐる論議が再び活発化している。

 受精後、5日ほど経ったヒト胚から取り出されたES細胞は、どんな細胞にも分化する能力を持ち、これを利用して難病治癒に向けた応用研究が期待される。しかし、採取の際にヒト胚を壊すことになるため、倫理面での問題も浮上している。

 このため、ブッシュ政権は新たに採取したES細胞を利用する研究に対する公的研究費の支出を、2001年8月以降、禁止する行政命令を出した。ナンシー・レーガン夫人はこれに対し、先月、ある会合の席上で、科学はES細胞研究という望みを与えてくれたのに、なぜそれに対して背を向けることができるのか理解できないと、ブッシュ政権の措置を暗に非難した。

 ナンシー夫人の熱心な推進活動は、その後、下院、上院の多数の議員がそれぞれ、超党派の書簡を大統領に送り、ES細胞研究に対する規制緩和を求める動きへと結びついた。書簡に署名した議員の中には、妊娠中絶反対の立場をとる議員の名前も見受けられる。

 ニューヨーク・タイムズ紙が6月8日付の論説で、不適切な研究規制を廃止すべきだと述べたのを筆頭に、米メディアはこうした動きにおおむね同調姿勢を示すと共に、ナンシー夫人の貢献を讃えている。

 ワシントン・ポスト紙(6月10日付)など、研究が直接、アルツハイマー病の治癒に結びつく可能性の低いことを指摘する声もあるが、いずれにせよ、ES細胞研究は医学の将来のために必要である(ニューズウィーク誌6月21日号)とする声が大きい。規制によって、米国が生物医学分野で研究に後れをとることや、優秀な研究者が流出することも懸念されている。

 アルツハイマー病、パーキンソン病、糖尿病など、研究によって治療法が開発される見込みのある病気を持つ家族を抱えた有権者も多く、ES細胞研究の是非は大統領選における争点のひとつともなりそうだ。

 (椎名亜由子・在米ジャーナリスト)