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米国ジャーナリズム時評

【46】

民間人殺害事件の余波

(2004年5月25日付)

 「私の息子はG・ブッシュとD・ラムズフェルドの罪のために死んだ」――イラクで斬首されて殺害された民間人男性バーグ氏の父親は、ABCテレビのインタビューに答えてブッシュ政権を強く非難する声明を発表した。

 殺害が確認されたのは折しも、アブグレイブ刑務所での米兵によるイラク人虐待に対する責任追及の声が高まっている最中。ブッシュ政権は、刑務所での虐待事件が明るみに出てさらに高まったイラク戦争反対の声を打ち消すために、この事件を利用したかったようだが、結果はむしろ逆効果に見える。

 5月14日付のニューヨーク・タイムズ紙論説では、バーグ氏殺害の映像で、刑務所での米兵による虐待の映像のイメージを相殺しようとするような動きを批判し、戦争推進派はイスラムやアラブ人を悪者扱いし、彼らを拷問にかける口実に残虐な殺害を利用していると指摘している。

 バーグ氏殺害発覚の前後の、イラク人虐待に関するブッシュ政権の対応には耳を疑うようなものが多かった。10日、虐待の様子を撮影した写真を見た後にペンタゴンで記者会見を行った大統領は、ラムズフェルド長官の責任を問うことなく、「素晴らしい仕事をしている」と絶賛し、その脈絡のなさで記者たちを唖然とさせた。

 当のラムズフェルド長官はといえば、13日に突然、イラクを訪問、兵士たちを労うと同時に、「どうにかして正気を保たないとならないから、新聞を読むのはやめた」と冗談を飛ばす始末で、責任の大きな一端を担うのが自分だと理解しているのかすら不明だ。

 軍幹部の責任を問う厳しい質問が議会で飛ぶたびに、軍幹部たちは質問者が米軍および戦争努力に対して誠実でないと矛先をかわしているが、不誠実なのはだれであるのか。米国民の大半は、そろそろ気付き始めている。(椎名亜由子・在米ジャーナリスト)