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(2004年3月23日付)
3月7日付のワシントン・ポスト紙は「ニュースを報道する際に我々が用いるガイドライン」と題された記事を編集主幹であるL・ダウニー・Jrの署名で掲載した。ニュース・メディアの信頼性にかかわる出来事が最近多く起こっていることを深刻に捉え、同紙はこの数カ月間、編集方針の見直しを図っていた。
この記事中で特に取り上げられているのは情報源の匿名性という問題である。
ワシントンでは政府高官が匿名にするという条件付きで情報を提供することが日常的に行われるが、ポスト紙は「たとえワシントンの伝統的な慣行に反しようとも」可能な限り情報源の名前を明示するように努める、それが無理な場合、なぜ情報源の名前が秘される必要があるのか、情報源がどんな地位にある人物であるかなどを読者に説明するよう努力することを記している。ニューヨーク・タイムズ紙も2月25日付の社外秘文書でこれと類似した方針を記者たちに示している。
主要紙がここにきて情報源の匿名性に制約を設けたのはブッシュ政権の極度な秘密主義に対してメディアが警戒心を抱いていることの現れでもある。大統領が記者会見を開く回数が少ないのに加えて、政権の補佐官たち、さらには報道官までもが情報提供を行う際に自身の立場を記事中で明かさないことを取材の条件にすることが多い。
もちろん、ウォーターゲート事件に大きな役割を果たした「ディープスロート」と呼ばれる匿名情報源の例に見られるように、情報源の匿名性堅持がニュース報道において不可欠となる場合もある。
しかし小欄でも以前に触れたイラクの大量破壊兵器保持にかかわるニューヨーク・タイムズ紙のJ・ミラー氏の報道に見られるように、情報源側が広めたいと考えている事実とはいえない情報をニュースとして流してしまった例も昨今は少なくない。
この場合も情報源や情報源の立場を明示すればその意図を読者が推測することも可能であった。匿名を要求する情報源に対してメディアは、その妥当性とメリットを慎重に判断する責務がある。両紙の新しいガイドラインには日本のメディア従事者も検討すべき内容が多く含まれている。
(椎名亜由子・在米ジャーナリスト)