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米国ジャーナリズム時評

【39】

9・11同時テロ事件、客室乗務員の電話記録公開

(2004年2月10日付)

 催涙ガスのようなものがまかれ、息苦しいと訴えながらも落ち着いた声で機内の様子を伝えた、世界貿易センターに最初に激突したアメリカン航空機のスチュワーデスからの電話の肉声テープが4分にわたり公開された。

 内容は以前から明らかにされていたものの、事件から2年半も経過した大統領選予備選挙のさなかに初めて肉声テープが公開されたことを不思議に感じる向きもあるかもしれない。

 1月26、27の両日に開かれた、9月11日独立調査委員会の公聴会で、このテープ公開は行われた。

 独立調査委員会の設立に際してはホワイトハウスが最後まで反対していたが、2002年末にようやく設立にこぎつけたという経緯がある。

 しかし、調査に必要な資料の大半を政権が機密情報としてアクセス拒否するという事態に阻まれ作業は難航、5月27日の締め切り延長を委員および被害者遺族の大半が希望しているが、現政権は、またしてもそれに絶対反対の構えを示している。

 ブッシュ政権が最終調査報告期限を延ばしたくない理由は明白だ。ハイジャッカーのうち少なくとも9人が偽造パスポートを使って入国を許可されていたという事実をはじめ、現政権の主張と相反する事実が次々と今回の公聴会で明らかにされた。

 委員会の希望する締め切り延長期限の8月が実現されると、現政権に不利な報告の余韻が冷めやらぬうちに11月の大統領選本選挙を迎えることとなる。しかも8月にはニューヨーク市で共和党全国大会が開催される予定だ。

 委員会から指摘された国境警備における問題点の数々は、ブッシュ政権のみならずクリントン政権時代へと端を発する。共和党政権が委員会の厳正な調査を阻もうとするのも、民主党が委員会の結果を不当に選挙に利用しようとするのも、いずれも9月11日の被害者に対する念を欠いた不届きな政治的思惑としか言いようがない。

 他方、共和党のマッケイン上院議員は2005年1月まで委員会の最終報告締め切りを延長する法律制定を支持すると発表した。長い調査期間をかけてでも民主・共和両陣営は事実関係を明らかにする義務がある。

 (椎名亜由子・在米ジャーナリスト)