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(2004年1月13日付)
2003年の暮れに米国ワシントン州で見つかったBSE感染牛。恐れていたシナリオが現実化したにもかかわらず、メディアの論調にはむしろ楽観的なものが目についた。
12月31日付のワシントン・ポスト紙ではオピニオン欄に、たとえ感染牛であっても食肉部分はまったく問題がないのに、メディアが不必要に消費者の不安を煽っているという趣旨の寄稿記事が掲載された。
処理過程で脳や脊髄などに肉が触れれば肉部分でも危険であるため処理過程の安全上の問題も存在することにはまったく触れぬまま、科学的見地からのみ安全性を主張する内容であることや、書き手がBSEに関する米政府の研究依頼の大半を請け負うハーバード・リスク分析センターに属していることなどを考え合わせると消費者の視点に立っているとは言いがたい。
12月25日付ワシントン・ポスト紙、1月2日付ロサンゼルス・タイムズ紙のオピニオン欄でもBSE騒ぎは根拠のないパニックである、今後10年でクロイツフェルト・ヤコブ病に感染するアメリカ人は一人も出ない可能性が高い、今後、広範囲に伝染するとも考えられないとする識者の意見が掲載された。
不用意に恐怖心を煽るのは厳に避けねばならないが、日本は全頭、英国は4頭に1頭であるのに比べて1万頭に1頭とBSE検査にかけられる頭数が少ないこと、なんらかの病気が認められた牛でも食肉として処理することが従来許可されてきたこと、強大な食肉業界が規制の強化に強く反対して予防措置がとりにくくなっていたことなど、BSE発生にいたるまでに問題点は多々見られる。
オンラインニュース・サイトであるSlate.comは英国でのヤコブ病による死者は合わせて143人でインフルエンザの年間3000から4000人と比べれば僅かな数だと論じている(12月5日付)。
しかしこれはニューヨーク・タイムズ紙(12月31日付)も報じているようにあらゆる対策が立てられた結果である。予防措置の必要を訴えずして感染牛の肉の安全性を謳い、インフルエンザの死者数と比べて矮小化するような論調が冷静なジャーナリズムと呼べるものか、疑問を感ずる。
(椎名亜由子・在米ジャーナリスト)