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米国ジャーナリズム時評

【36】

フセイン元大統領の拘束

(2003年12月23日付)

 ぼさぼさ頭にひげ面で頭髪のシラミを米軍医師に検査されるフセイン元イラク大統領――米軍によるフセイン氏捕縛のニュースは、逃亡者然とした風貌で米軍のなすがままにされるフセイン氏の映像と共に全世界に伝えられ、支持率の低下に悩んでいたブッシュ政権にとって、またとないクリスマス・プレゼントとなった。

 今回の捕縛のニュース発表は周到に計画された。通常は日曜朝に教会に出向くことの多い大統領だが、発表翌日の14日は捕縛後初めて姿を見せることとなる場所が教会となり、アラブ世界にあらぬメッセージを送ることになるのを恐れて教会への礼拝もキャンセルしたという(15日付ワシントン・ポスト紙)。

 同日ホワイトハウスから行った演説でもフセイン氏捕縛がなによりも「イラク国民のために」喜ばしいことである旨を強調することを忘れず、以前にフセイン氏のことを「父を殺そうとした男」と表現、個人的な感情をむき出しにし非難を浴びた時と比べると格段に慎重な態度を見せた。

 「まさに穴倉に追い詰められたネズミ」(NBCのキャスター、トム・ブロコウ氏)、「なぜ自殺しなかったのか不思議」(ABCのコメンテーター、ジョージ・ステファノポロス氏)とメディアはそれぞれにフセイン氏の権威失墜を騒ぎ立てる一方、民主党大統領候補のディーン氏も「大統領は今日という日を祝う権利がある」と今回ばかりは大統領への批判の矛先を収め、イラク戦争に反対したフランス、ドイツからも賛辞が届けられた。

 興奮が一段落した今、目下の注目はイラク情勢が今後沈静化するのかということと、フセイン氏がどこで裁かれるのかという2点に集まっている。

 16日、ABCで放映された独占インタビューでブッシュ大統領は、フセイン氏の刑はイラク国民が決めるべきだが、と前置きした上で「極刑に処されるべき」との見解を示し、その極度にアメリカ的な価値観がまたしてもヨーロッパ各国をはじめとする国々の反感を買いそうな気配も漂い始めている。捕縛に対する評価が続いているうちにイラクの現状を好転させられるか否かがブッシュ政権支持率巻き返しの新たな分岐点となろう。

 (椎名亜由子・在米ジャーナリスト)